2016 Fiscal Year Research-status Report
福永武彦と加藤周一を通した1930~40年代の若手文学者の知的ネットワークの解明
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16K02613
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中島 亜紀 (西岡亜紀) 立命館大学, 文学部, 准教授 (70456276)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鷲巣 力 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 教授 (30712210)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 福永武彦 / 加藤周一 / 比較文学 / 世界文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
基礎研究では、西岡個人の大学、図書館、日仏会館などでの調査活動と資料の収集、鷲巣が主導している加藤の手稿ノート類の解析とデータベース構築のための作業を中心に行った。また、本研究の福永と加藤を結節するテーマとして、加藤周一研究会にて岩津航「加藤周一とフランス文学史」の発表を依頼した(12月)。 成果報告・社会還元では、5月の加藤周一文庫開設記念公開講演会の運営や、それに続く連続講座(いずれも於 立命館大学)の運営で遺族や国内外の研究者の招へいに協力した。また、加藤の資料のデータベース化作業を踏まえ、鷲巣が主導して、『青春ノート』(全8冊)のデジタルアーカイブ化とその公開、新聞への寄稿やNHKの特集番組への協力を行った。西岡は、2017年2月に「情報交換会 福永武彦研究のいま」に参加して、加藤周一文庫貴重書庫所蔵の福永資料の現状を報告した(近藤圭一の基盤研究(C)主導で『年報 福永武彦の世界』4号にて文字化・関係者や関連機関に配布)。また、こうした活動と合わせて、丸山眞男文庫の公開研究会聴講、津島祐子追悼シンポジウム、日仏文化講座等をはじめとする学会や研究会における、最新の研究動向の探査や隣接領域の研究者との情報交換などを、年間を通して行った。 以上と並行して、西岡は来年度の成果公表に向けて、2017年度開催の学会発表へのエントリーや関連機関におけるシンポジウムの企画(2017年5月の日本近代文学会のパネル発表や10月の日仏文化講座の講演などが決定)の準備、打合せ、資料収集などを進めてきた。鷲巣は 『青春ノート』(抄録)を人文書院から刊行(2017年予定)するための編集作業を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基礎研究は、福永、加藤ともに、順調に進んでいる。加藤研究では、データベース構築のための手稿ノート類のデータベース化が進み、福永研究では都内の関連機関での調査と基本文献の取集・解読が進んだ。唯一、予定していた福永に関連する地方での調査の調整がつかなかったが、それに代わる文献解読は進んだので、全体としては順調と言えよう。 成果発表・社会還元についても、おおむね順調に進んでいる。とくに加藤周一研究の分野では、加藤文庫における『青春ノート』の公開や開設記念行事なども予定通り進み、よいペースである。一方、福永研究では、福永・加藤・中村の3者を扱うパネル発表や口座の企画も決定しており、2016年度中にその準備に西岡も関わってきた。ただ、成果の公開がいずれも2017年度以降に回っているので、2016年度の成果発表としては間に合わなかった。その点では、やや遅れているが、準備は順調に進んでいるので、全体としては順調といえる。また、2016年度の成果としては、西岡が加藤文庫所蔵の福永の文献における書き込みの調査とその成果を「情報交換会 福永武彦研究のいま」で報告した。そうした、加藤と福永の共同研究という新たな側面も前進した。 調査や2016年度に限った成果公表は、当初の計画通りとは言えないが、加藤資料のデータベース化作業が予定より進展したこと、福永生誕100年を前にした当初は予定していなかった学会や企画が複数動き始めているということなどを合わせると、全体としてはおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、2018年度の福永生誕100周年に向けて、福永を中心とした企画が増える。それを見越して、福永研究の成果をより社会に還元するために、既に別の科研費にて継続してきた『年報・福永武彦の世界』の刊行を、本研究課題で引き継ぐ(具体的には5号、6号予定)。それに関わって、関係者へのインタビューや情報交換会の開催なども行う。 また、鷲巣主導のデータベース構築作業の進展を踏まえて、データベースの利活用も進めたい。具体的には、データベースの資料を活用しながら加藤と福永、または同時代の文学者たちの知的ネットワークの解明作業を進めていく。それらを、学会、研究会、セミナーなどの公開の場で、成果として還元することも行う。 以上の計画を進めるために、インタビューや報告書の作成における実績が豊富な比較文学者の近藤圭一と、福永研究に加えて加藤の研究も進めてきたフランス文学者の岩津航を新に研究分担者として加える。両者の協力によって、2016年度にはまだ端緒を示したに過ぎない福永と加藤の関係性についての研究や鷲巣主導で作成したデータベースの利活用が飛躍的に進むであろうと予測できる。 なお、西岡は既に決定している学会発表や講座発表を遂行するのに加えて、2016年度に十分には遂行できなかった地方調査を進めるべく、予定を調整していく。
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Causes of Carryover |
当初予定していた加藤周一文庫公開記念行事における研究者の招へい等の資金が、大学の関係機関から捻出された。そのため、記念行事の経費として鷲巣に配分していた経費が使用されなかった。また、加藤周一資料の公開が『青春ノート』(抄録)の出版やNHKによる報道などによって行われることになった。そのため、年度末に報告書の作成費として西岡が確保していた経費も今年度は使用されなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
西岡が確保していた報告書の作成費は、福永武彦を中心とした研究やインタビューや情報交換会などの文字化を収録する報告書『年報・福永武彦の世界』の刊行に充てる。現在、第1~4号まで別の経費で進んでいるので、第5~6号をつなぐ。また、2018年の福永生誕100周年を機に、代表者の成果公開や共同発表等の機会が増えている。そうした活動の経費にも充てる。さらに、それらを充実させるための協力者として研究分担者2名を新たに補充する。 加藤文庫のデータベース化作業は予想以上にはかどっているため、予定していたよりも1名当たりのアルバイト人件費がかかっている。よって、鷲巣のほうで繰り越した次年度使用額は、アルバイト人件費の充足に用いる。
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Remarks |
*青春ノートのデータベース化のためのデータ解読・キーワード抽出作業の一部を負担した。成果は、大学図書館の「加藤周一文庫」のURLにて公開 *鷲巣力による「時代の岐路に加藤周一を読む」(『京都新聞』4月1日)「加藤周一 「反戦」を貫いた生涯」(『北海道新聞』5月19日)などの新聞記事の寄稿
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Research Products
(3 results)