2017 Fiscal Year Research-status Report
福永武彦と加藤周一を通した1930~40年代の若手文学者の知的ネットワークの解明
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16K02613
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中島 亜紀 (西岡亜紀) 立命館大学, 文学部, 准教授 (70456276)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鷲巣 力 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 教授 (30712210)
近藤 圭一 聖徳大学, 文学部, 准教授 (60306454)
岩津 航 金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (60507359)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 福永武彦 / 加藤周一 / 1930年代 / 1940年代 / 世界文学 / 思想史 / フランス文学 / ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
◆基礎研究:西岡主導の福永研究では、都内の大学、図書館、日仏会館、長崎での調査活動と資料収集を進めた。鷲巣主導の加藤研究では、手稿ノート類のデータベース構築・拡充の作業を進め、新たに8冊の青春ノートを公開した。また、新たに加わった分担研究者岩津と西岡で福永と加藤をめぐる共同発表を行い、分析的観点からの両作家の共同研究も進んだ。各自、最新の研究動向の探査や隣接領域の研究者との情報交換を年間を通して行った。 ◆成果報告・社会還元:福永研究では、5月に日本近代文学会春季大会にてワークショップ「『1946文学的考察』における世界文学のプログラム」の企画・発表(西岡、岩津、戸塚学)にて学会報告、10月に日仏会館の文化講座「仏文系作家たちによる戦後文学の出発―加藤周一・中村真一郎・福永武彦『1946・文学的考察』を中心に」に登壇(西岡、岩津、鈴木貞美、富岡光一郎、三浦信孝)にて社会還元を行った。また2月に『年報・福永武彦の世界』100周年記念号刊行(2018年9月予定)に向けて分担研究者の近藤と研究協力者の山田兼士との打合せを行った。近藤はその年報掲載の評伝の調査・執筆を進めている。加藤研究では新たに「青春ノート」8冊の公開、鷲巣による札幌大学や『イタリア図書』などでの報告や論文が成った。 ◆次年度への架橋:2018年度予定の企画を準備した。西岡は、2018年4月の「中村真一郎の会」シンポジウムの企画・依頼(2017年10月~)、上記の『年報・福永武彦の世界』100周年記念号の座談会「福永研究の過去・現在・未来」(仮)の企画や執筆者選定と依頼(2月~)、編集方針の調整に努めた。鷲巣は『青春ノート』(抄録、人文書院)や2019年の加藤生誕100周年に向けた出版物の執筆・編集、2018年に開催する立命館大学土曜講座(連続講演会)、6月と7月の加藤周一研究会のための日程調整等を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基礎研究は、福永、加藤ともに順調に進んでいる。成果発表・社会還元も、ほぼ予定通りに進んでいる。2017年に予定していた成果発表・社会還元の大半は、福永生誕100周年(&加藤没後10年)の2018年や加藤生誕100周年(&福永没後40年)の2019年の記念年に持ち越されてプールされている状態とはいえ、確実に2018年に遂行されるという意味では、当初の計画はおおむね順調に進んでいると言える。 具体的な進展は以下の通り。福永研究では、福永・加藤・中村の3者を扱う日本近代文学会のパネル発表や日仏会館の社会人向け講座にて、西岡(福永担当)と分担研究者の岩津(加藤担当)が報告に参加した。その準備のために西岡は、都内の関連機関での調査と基本文献の取集・解読を進めた。また、2018年の記念シンポジウムや『年報』100周年記念号の対面やメールでの打合せのうえ、2018年3月に執筆者や座談会調整者への依頼を行った。加藤研究では、鷲巣主導によるアルバイトの作業により、手稿ノート類のデータベース化と加藤文庫におけるデジタルアーカイブ公開が順調なペースで進んでいる。 なお、本年度は全体のテーマである「若手文学者の知的ネットワーク」という視座の充実にも努めた。2017年度は加藤と福永がともに執筆した『1946文学的考察』の刊行から70周年であったため、日本近代文学会や日仏会館での成果公表で『1946~』の分析考察を意識的に進め、加藤と福永の比較研究を充実させた。また、西岡は2010年より続けていたが数年中断していた長崎調査を再開し、遠藤周作記念館や『沈黙』他キリシタンものの舞台の外海や長崎歴史博物館での調査も行った。さらに学習院大学博物館と日仏会館の共同開催の「辻邦生のパリ」巡回展や保苅瑞穂による講演「辻邦生の読んだプルースト」(日仏会館)に赴き、同僚であった辻邦生との対照研究の可能性も模索した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は研究課題の最終年度でかつ福永生誕100周年、加藤没後10年の節目である。西岡主導で『年報・福永武彦の世界』100周年記念号の刊行、記念講演会の開催、シンポジウムや学会誌等での成果発表を予定している。一方、鷲巣主導で、加藤文庫のアーカイブ作業、6、7月の加藤周一研究会、10月の連続講演会等の企画も進める。 さらに西岡は、本年度に続き「若手文学者の知的ネットワーク」という全体テーマの拡充に努める。加藤周一、中村真一郎、辻邦生、遠藤周作をはじめ同時代の仏文系作家との対照研究(横のつながり)と並行し、2019年度以降の新たな西岡のテーマを見越して「福永武彦から現代メディアまで」といった縦のつながりの掘り下げにも着手する。具体的には、加藤文庫のアーカイブの利活用、学習院大学史料館の学芸員との連携(辻邦生資料分析や学習院所蔵の福永資料調査)、後続の文芸メディアへのアダプテーションの検証などである。『発光妖精とモスラ』『廃市』『風のかたみ」(映画)『深夜の散歩』(ミステリー)のテキスト分析と再評価にも努める。 本年度から次年度に架橋している企画は以下の通り。西岡は、第13回中村真一郎の会のシンポジウム「生誕100年 中村真一郎と福永武彦」にて『発光妖精とモスラ』を題材に招聘発表(「原始vs 文明-文学(または文学者)の運命」)、『中村真一郎手帖』に寄稿、『京都新聞』に取材協力、一般誌の特集に寄稿(依頼執筆)、『昭和文学研究』の特集に寄稿(依頼執筆)、『年報・福永武彦の世界』100周年記念号の統括などを予定。鷲巣は、次年度刊行予定の『加藤周一 その青春と戦争』(共編著)、加藤周一『青春ノート(抄録)』(共編著)、『加藤周一の再発見――『羊の歌』を読みなおす』(単著)等の編集と執筆を進める。岩津は年報の論文寄稿や座談会への協力、近藤は評伝執筆と編集やHPの維持に協力する。
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Causes of Carryover |
『年報・福永武彦の世界』5号を2017年度に刊行する予定であったが、100周年を区切りに、若手の座談会や評伝といった新たな企画を追加して、100周年記念号として2018年9月刊行で第5号・6号の合冊とすることに変更した。年報の刊行のための編集・印刷・輸送費やそこに含める座談会、参加者の旅費等として確保していた予算を、次年度に送ることにした。一方、加藤周一文庫のアーカイブ化の作業が、予定より早いペースで進んでいるため、2018年度のアルバイト雇用費を増額する必要が生じた。それを見越して、2017年度の西岡の資金のなかの長野調査費分を次年度に繰り越し、分担金の増額に充てることにした。
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Research Products
(13 results)