2018 Fiscal Year Research-status Report
福永武彦と加藤周一を通した1930~40年代の若手文学者の知的ネットワークの解明
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16K02613
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中島 亜紀 (西岡亜紀) 立命館大学, 文学部, 准教授 (70456276)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鷲巣 力 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 教授 (30712210)
近藤 圭一 聖徳大学, 言語文化研究所, 准教授 (60306454)
岩津 航 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (60507359)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 福永武彦 / 加藤周一 / 1930年代 / 1940年代 / 世界文学 / ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
◆基礎研究:西岡主導の福永研究では、都内の大学、図書館、日仏会館、長崎での調査活動と資料収集を進めた。また、分担研究者岩津を含む座談会「福永研究の過去・現在・未来」(2019年2月26日開催、戸塚学、近藤、西岡、紙面参加:飯島洋)を行った。また、年報に連載する予定の福永評伝執筆のために、近藤が福岡、長崎等の現地踏査を行うなど、各自基礎的な調査、テキスト解読に励んだ。鷲巣主導の加藤研究では、手稿ノート類のデータベース構築・拡充のための草稿テキスト解読を進めた。 ◆成果報告・社会還元:福永研究では、西岡が単独で以下の成果公表を行った。①「『モスラ』における原始vs.文明 -文学(または文学者)の運命」(中村真一郎の会総会、招聘発表、4月28日)、②「マンガ・アニメ世代にこそ読んでほしい福永武彦と中村真一郎」(日本マンガ学会名古屋マンガ研究部会、招聘発表、8月26日)①は論文「モスラが来る! ―「発光妖精とモスラ」における文学の運命の隠喩」(『中村真一郎手帖』14号、2019年4月)にまとめた。これ以外に論文「「日本語」でフィクションを書くという格闘~マチネ・ポエティクと大岡信をつなぐ線~」(『昭和文学研究』78集、2019年3月)も執筆した。岩津は単著論文「福永武彦と堀田善衛」(『年報・福永武彦の世界』第5号に掲載予定)を脱稿した。加藤周一研究では、上記の作業を踏まえ「1968 1969」「〔試作ノート〕」「Notes on Arts」「狂雲集註」「日本文学史 古代」「日本文学史 平安」を加藤文庫アーカイブに公開した。 ◆次年度への架橋:福永研究では『年報・福永武彦の世界』5号(2019年内に刊行)の準備として座談会の文字化と編集、近藤の福永評伝執筆、論文や書評の校正作業を、西岡主導で進めた。加藤研究では、2019年9月開催の加藤周一生誕百年記念国際シンポジウムの詳細が決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
基礎研究は、福永研究、加藤研究ともに順調に進んでいる。成果発表・社会還元は、加藤のほうはほぼ予定通りに進んでいるが、福永研究において、報告書『年報・福永武彦の世界』第5号の刊行が遅れている。研究代表者西岡をはじめとする参加者の校務多忙により座談会の日程調整が難しく開催が2019年2月にずれ込んだこと、新たに年報に加えた評伝ほかの、整理に時間がかかっているためである。 具体的な進展は以下の通り。加藤の草稿整理は、アルバイトの作業により手稿ノート類のデータベース化と加藤文庫におけるアーカイブ公開が、順調なペースで進んでいる。「1968 1969」「〔試作ノート〕」「Notes on Arts」「狂雲集註」「日本文学史 古代」「日本文学史 平安」が新たに公開された。鷲巣による単著1冊、共著1冊、共編1冊も刊行した。福永研究では、西岡個人の学会での2件の招聘発表や学会誌等への1本の単著論文と1本の分担執筆が成った。また、その準備のための関連機関での調査と基本文献の収集・解読も進んだ。また、近藤が行っている評伝研究では、九州地方の古地図や現地踏査や行政資料の閲覧などによる綿密な調査により、新たな伝記的事実の解明が進んでいる。刊行は遅れているとはいえ、全体的にみれば、実質的な共同研究としての内容においては、進展している側面もある。 なお、刊行が遅れている『年報・福永武彦の世界』5号の編集状況は以下の通りである。岩津ほか3名の研究協力者による論文原稿、近藤が2017年に聞き取った関係者へのインタビュー原稿、山田兼士執筆の書評は脱稿済。目下、2月に開催した座談会の文字起こしや評伝の最終調整といった作業を進めており、2019年秋には刊行する見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
当初目標として掲げていた研究計画は、基礎研究、成果報告・社会還元ともに概ね目標を達成している。残すところは、刊行が遅れている『年報・福永武彦の世界』5号の編集と刊行のみである。現状は以下の通りである。岩津ほか3名の研究協力者による論文原稿、近藤が2017年に聞き取った関係者へのインタビュー原稿、山田兼士執筆の書評は脱稿済。目下、2月に開催した座談会の文字起こしや評伝の最終調整といった作業を進めており、2019年秋には刊行する見込みである。今後は、この編集・刊行を最優先しつつ、余裕があれば、西岡の基礎研究において、さらなる開拓が可能な下記の2点に取り組む予定である。 ①同時代や後続の他のメディア文芸表現との結節点の解明。福永の時代から現代の文芸に継承することができるもの、継承すべきものは何かを模索するためである。具体的には、すでに着手している『モスラ』をはじめとする、福永作品の他のメディア文芸(映画、アニメーションなど)におけるアダプテーションの諸相の解明、大岡信や加藤周一などの同時代の作家との問題意識の共有の解明とそれに基づいた彼らの「文学観」の構築、後続の作家(現代の若い作家)における福永の引用やアダプテーションの試みの分析。 ②2017-18年度にかけて東京大学本郷図書館の改装工事のために、いったん中断していた各種の調査を再開する。福永世代の東京帝国大学フランス文学科の教養のベースをさぐるための当時の資料の閲覧。そこから、実態や諸相を解明する聞き取りや資料探索を進める。
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Causes of Carryover |
研究代表者をはじめとする参加者・執筆者の校務他多忙により、2018年度に予定していた『年報・福永武彦の世界』5号のための座談会の開催が遅れた。これに伴い、2019年度に刊行を延長したため、文字起こし、編集、印刷などのための人件費や刊行費、研究関係者・関係機関への通信費を、次年度に繰り越した。 『年報・福永武彦の世界』5号の編集状況は以下の通りである。岩津ほか3名の研究協力者による論文原稿、近藤が2017年に聞き取った関係者へのインタビュー原稿、山田兼士執筆の書評は脱稿済。目下、2月に開催した座談会の文字起こしや評伝の最終調整といった作業を進めており、2019年秋には刊行する見込みである。 4月に発注した文字起こし費、すべての原稿を取りまとめた組版、印刷などの一切の刊行費用、研究関係者・関係機関への通信費に充てる。すべての作業を終えたうえでもし経費に余裕があるなら、経費の関係で数年前から更新が滞っているHP「年報・福永武彦の世界」の再開や拡充のために用いる見積である。
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Research Products
(10 results)