2017 Fiscal Year Research-status Report
近代日本文学の生物学・優生学との対峙、その国際的、総合的研究
Project/Area Number |
16K02616
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Research Institution | Aoyama Gakuin Women's Junior College |
Principal Investigator |
辻 吉祥 青山学院女子短期大学, 現代教養学科, 准教授 (50409588)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 優生学 / 比較文学 / 動物論 / 韓国文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、〈近代〉日本とりわけその文学的な諸領域において、最も包括的また根底的な浸潤を許したかに思われる自然科学思想としての生物学、もしくはさらに踏み込んでイデオロギーと称すべきかに思われる自然史的社会観としての「社会進化論」ないし「優生思想」について、その相互の関係における微細なポリティックスを、言説の実証的な確認作業を通じて――もちろんその影響関係は非-直接(字義)的、相互に触発的、重層決定的でもありうるため、粗悪な実証主義(特定の用語の非有機的な点在を字句レベルでのみ関連づける)に陥らぬよう意識しつつ――考察し、これまでにない形で思想化をはかろうとするものである。それら思考形態の相互の転換、隠喩的な転位、投影、あるいはまたイメージの再生産構造を見定めてゆくために必要な作業として、二年目である2017年度も計画に則り、自然主義文学および同時代の新聞・雑誌、生物学的思想の由来と系譜を明らかにする文書などの、調査・収集・読解を、研究支援業務協力者の助力を得つつ行なった。これによって、多角的な比較文学、比較思想的アプローチを必須の前提とする本研究の中心となる、必要とされた資料群に基づいた見解を述べる道筋をつけることが出来たと思われる。加えて、帝国体制としての日本=旧植民地における資料群の確認作業も継続して行なわれており、研究の国際的視野を担保する観点からの解読を昨年度同様に行なうことができた点でも、進捗の意義があった旨報告できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二年目の課題とした自然主義を中心とした文学テクストとその同時代の言説環境の分析作業、生物学的思想の淵源と系譜を辿る作業については、順調な進捗をみており、次年度の研究の基礎となる資料が、系統的に整理・拡充されている。
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Strategy for Future Research Activity |
二年目の進行具合にとりわけ問題は生じておらず、当初の研究計画通り地道な調査・確認と解読の作業をおし進めていくことに変更はない。つねづね結果のための拙速と思考の短絡を遠ざけるべきものと留意しつつ、一次資料の収集と解読に時間をできるだけ割けるように、昨今のたいへん厳しい研究環境の中、工夫、努力しなければならない点も同様である。
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Remarks |
なお、成果広報の一環として、研究内容を生かした、講演一回を以下の題目・日時・場所にて行なった。 辻吉祥「ユーモアはブラックでどうぞ――児童文学に賭けられた未来」青山学院校友会 女子短期大学同窓会 国文学科会 文学講座 2017年12月16日(土)於:青山学院女子短期大学 S101教室(東京都渋谷区)
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Research Products
(1 results)