2016 Fiscal Year Research-status Report
日本語複文構造の学習において役割を果たす生得的知識の同定について
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16K02621
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
藤井 友比呂 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (40513651)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
時崎 久夫 札幌大学, 地域共創学群, 教授 (20211394)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 複文 / 補文 / 補文標識 / 句構造文法 / 構成素構造 / コーパス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の成果は,(1)記述面において,研究対象である日本語の複文の構成素構造を同定するテストやデータを定式化したこと,(2)コーパス分析について,同現象が関連する親の自然発話の分析の当初結果を得ることができたこと,(3)理論面では,句構造文法の観点から学習における仮説スペースの定式化ができたこと,の3点である. (1)については,どのような種類のデータが複文構造の仮説のどの部分を動機づけるのかについてこれまでより如実に理解が進んだと言える.ト節のみならず,ノ節,コト節,ヨウニ節の補文構造が一般的に考えられている構造をしており,それ以外の構造をしている証拠は発見されないことが分かり,記述面での理解が深まったと言える.(2)については,CHILDESコーパスから1コーパスを選び,分類を施した.25,556発話のなかで607発話に補文標識トが含まれ,そのうち非文法的あるいは聞き取れない発話な25を除いた582発話を分類した.分類は主節を6つに分類し,従属節内部を6つに分類して,6x6の36分類となった.当初予定した4x4の16分類より多様な分類となった.(3)理論面では,ある時点まで種々の複文構造の可能性の比較・選択を問題にしていたが,規則の集合であるところの文法の比較・選択を問題にすべきことがわかった. 他方で,目標にしていた,現象の音韻面の理解については多少の進展はあったものの,大きく進んだとはまだ言えない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標であったコーパスの当初分析およびそれを吟味し最良の分類が何かを決定するという目標は達成できた.当初分類は補文の内部形式の観点から適切になされ,成果があったため,学会発表を行った.ただ,問題もあり主節の形式はより細やかな基準が必要であり,必要な基準を加えた新たな分類法が必要であることが分かった.
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Strategy for Future Research Activity |
コーパスの新しい分類を法を適用して再分類を行うとともに,初年度に扱ったコーパス以外のコーパスも分析することになる.また,理論面の作業はほぼ完了したので,言語入力データをどう解釈して文法比較が行われているかのモデルが必要であるので,文献的調査が必要である.また,韻律構造的側面についても文献調査の必要性がまだある.
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Causes of Carryover |
代表者も分担者も共著の学会発表1件のために出張をしたが,たまたま分担者独自の研究発表が同学会で別にあり,本課題からの旅費の支出がなかったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H29年度の学会発表,研究会の旅費が足りなくなることも予想されるのでそこで使用する予定である.
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