2017 Fiscal Year Research-status Report
現代モンゴル語における属格主語認可条件の解明に関する研究
Project/Area Number |
16K02623
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
牧 秀樹 岐阜大学, 地域科学部, 教授 (50345774)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | Mongolian / Genitive / Subject / Stative / Japanese |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度研究期間において、私は、モンゴル語コーチン方言母語話者のYiliqi氏、同言語学者のLina Bao博士、そして、長谷部めぐみ博士、とともに、 モンゴル語における、述語の種類と属格主語の分布の関係について、詳細に調査した。具体的には、存在を示す動詞と形容詞と、属格主語が関係節内部に出現した際、属格の認可に関して、モンゴル語と日本語の間に、重要な相違があることを突き止めた。(1)と(2)の例が、最もこの状況を良く示している。(分かりやすくするために、モンゴル語の例文を日本語に変換して示す。)(1) 池が/*池の ある庭 (2) 土曜日に 卵が/*卵の 安い 店 (1)では、存在を示す動詞「ある」と主語「池」が関係節内部に生じているが、主語「池」は、必ず、主格「池が」でなければならない。それに対応する日本語の例は、主語が、「池が」であっても、「池の」であっても、ともに可能である。(2)では、形容詞「安い」と主語「卵」が関係節内部に生じているが、主語「卵」は、必ず、主格「卵が」でなければならない。それに対応する日本語の例は、主語が、「卵が」であっても、「卵の」であっても、ともに可能である。このことと、他の関連する例から、私たちのグループ は、モンゴル語における属格主語の認可条件について、以下の結論に達した。つまり、従来、(3a), (3b)がその認可条件と考えられていたが、実は、(3c)も必要であるということである。(3a) 属格主語は、局所的な領域で、名詞的要素に、c-commandされなければならい。(3b) 属格主語は、述語の連体形と局所的関係を持たなければならない。(3c) 属格主語は、時制主要部Tの指定部においてのみ、つまり、文TPにおける高い位置においてのみ、許容される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度の目標は、モンゴル語における、述語の種類による属格主語認可への寄与の可能性に関する調査であった。これについて、実際に、詳細に渡って調査でき、その成果を
Yiliqi, Hideki Maki, Lina Bao and Megumi Hasebe (2017) "Subjects of Stative Predicates in Prenominal Sentential Modifiers in Mongolian," Handbook of the 155th Meeting of the Linguistic Society of Japan, 354-359.
という形で発表できたからである。
|
Strategy for Future Research Activity |
2016年度の調査において、モンゴル語の属格主語認可に関して、関係節内部においてのみ属格主語が認可されるのではなく、それが共起する述語が連体形である限り、その属格主語をc-commandする名詞句(具体的には、目的語である名詞句)があれば、単文においても、属格主語が認可されることを発見した。その後、さらにこの現象を調査していくうちに、名詞句だけではなく、より大きい範疇で、しかも、一見名詞性がないように見える節(具体的には、目的語である節)もまた、属格主語の認可に関与していると思われる例に遭遇した。この現象は、さまざまな文献を調査しても、まだ、報告されていないものである。2018年度は、節による属格主語認可に関連するデータを詳細に調査し、この現象の背後に、どのような原理が隠されているか、解明していく予定である。
|
Research Products
(2 results)