2017 Fiscal Year Research-status Report
中断節の語用論的機能に関する通言語的対照研究:連体・準体節と連用節の対比を中心に
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16K02624
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
堀江 薫 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (70181526)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 非従属化 / 従属化 / 言いさし / 中断節 / 連体(修飾)節 / 連用(修飾)節 / 準体節 / 語用論的機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、(I)「非従属化現象(insubordination; 日本語学においては「言いさし」として知られる)」と「従属現象(subordination)」の連続性、(II)「非従属化現象」のための、「連体(節)」・「準体(節)」と「連用(節)」の間の機能的相互関係の再検討、特に奥津(2005)の「連体即連用」現象の通言語的・類型論的観点からの検討、(III)日本語における「けど」「が」による中断節現象の談話分析・語用論的観点からの分析について研究論文や、招待講演、通常の学会口頭・ポスター発表を行った。 具体的には、(I)に関しては、言語類型論の観点から日本語の従属化と非従属化の連続性に関する最新の研究成果をHandbook of Japanese Contrastive Linguistics (Mouton, 2018)の"Subordination and insubordination in Japanese from a crosslinguistic perspective"という論文として発表した。また、連体節に関しては、日本語やアルメニア語、クメール語を対象として、国内の言語学会等において複数回の研究発表を行った。 (II)に関しては、国際ワークショップでであるWorkshop on Nominalization and Noun Modification, (San Francisco University, San Francisco, USA, March 17, 2018)において“Functional Utility of Noun Modification and Nominalization relative to Renyoo Syuusyoku(Adverbial modification): A comparative study.”という題目で、また「言語の類型論的特徴を捉える対照研究会第6回公開発表会」( 11月19日, 大阪府立大学I-siteなんば)においても「英語における連体と連用の関係-日本語(・韓国語)との対比を通じて-」という題目で招待講演を行った。 (III)に関しては、日本語における最も顕在的な中断節現象である「けど」「が」による中断節の語用論的機能に関して共同研究を行い、認知言語学会、社会言語科学会等の国内学会で研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、中断節(言いさし)の源泉となっている3種類の従属節構文、即ち、一般言語学で言うところの「関係節」「補文(節)」「副詞節」に関して、日本語学における重要な文法的概念である「連体(修飾)節」「準体節」「連用(修飾)節」との平行性、相違点を検討した。特に、奥津(2005)の「連体即連用」現象に関する洞察を再検討し、日本語で生産的に見られる、「連体節」と「連用節」が非常に機能的に近い働きを見せる現象に関して、「準体節」と「連用節」の間でも同様の現象が観察されるか、また他言語では「連体即連用」現象がどの程度生産的に見られるかを検討した。 現時点では、「準体節」と「副詞節」の間で若干機能的な類似性が見られる現象が観察されるが、「連体即現用」ほど規則的な対応ではないように思われる。 また、「連体即連用」現象は日本語に比べると他言語ではそれほど生産的に見られないという調査結果が得られているが、この点はさらに検討が必要である。 日本語において「中断節」の使用頻度が高く、多様な中断節が可能である背景に、上述した「連体節」(準体節)と「連用節」の機能的連続性(連体即連用)が密接に関わっているか否かは今後検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は最終年度にあたるため、中断節の種類、語用論的機能のタイプ、中断節の源泉となっている従属節の種類、当該言語においてどのタイプの中断節が発達しており、どのような機能を有しているか、それは当該言語の類型論的特徴とどのように相関しているか、といったリサーチクエスチョンを考究し、原著論文、研究発表において現時点の考察を積極的に発表していく計画である。
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