2017 Fiscal Year Research-status Report
ハンガリー語動詞接頭辞の多義構造にみられる文法化と活性化
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16K02626
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
早稲田 みか 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 教授 (30219448)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ハンガリー語 / 動詞接頭辞 / 文法化 / 活性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、ハンガリー科学アカデミー言語学研究所の言語コーパスおよびデジタル化されている文学テキストを利用して、動詞接頭辞 megつきの動詞と接頭辞なしの動詞の用例、さらに同じ基動詞に異なる動詞接頭辞 megとelが接続している用例を、コンテクストがわかるようなかたちで収集した。前年度には、「来る」という意味の基動詞 jon に接頭辞 meg と el が接続した megjon と eljon の使用例を取りあげて、辞書の記述と比較しながら、微妙な用法のちがいについてコンテキストを考慮しながら分析したが、今年度は「始まる」という意味の基動詞 kezdodik をとりあげて、同様の分析を行った。その結果、megkezdodik は「始まることがわかっていることが予定通り始まること」を、elkezdodikは「待っていたことや楽しみにしていたことなどがようやく始まる」というニュアンスのちがいがあることがわかった。 両者の意味のちがいは、動詞接頭辞の文法化により背景化された過程(移動プロセス)が活性化された結果であるという仮定に合致している。すなわち、動詞接頭辞 meg は語源的にみると、もともと「うしろへ」という意味を有していたが、それが背景化されて、主として完了を表す機能をもつようになった。他方、動詞接頭辞 el は「離れて」あるいは「遠くへ」という方向を表す意味を有しているが、 完了を表す機能ももつようになった。このような方向から完了へという文法化によって背景化された本来の意味(移動プロセス)が活性化されることにより、上記のような微妙な意味のちがいが生じると説明できることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データベースおよび文学作品からのデータの収集は順調に進んでおり、それらの分析結果は、ほぼ予測どおりであることから、おおむね計画どおり順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、計画通り、データの収集と分析を継続する。 分析結果をまとめ、結果をハンガリー語の記述および教育に還元できる方法を考察する。
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Research Products
(2 results)