2016 Fiscal Year Research-status Report
バントゥ諸語における従属節の形式と意味に関する比較研究
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16K02627
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
米田 信子 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 教授 (90352955)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | バントゥ諸語 / 従属節 / 名詞修飾節 / マイクロバリエーション / 国際共同研究 / 国際研究者交流 / 英国 / タンザニア |
Outline of Annual Research Achievements |
28年度前半はサバティカル期間であったため、ロンドン大学東洋アフリカ研究学院 (以下SOAS)に研究拠点を置き、SOASを拠点とする国際プロジェクト“Morphosyntactic variation in Bantu: Typology, contact and change”(以下SOAS国際プロジェクト)の客員メンバーとして共同研究を行った。SOAS国際プロジェクトが名詞修飾節に関して対象にしていたのは、いわゆる「関係節」と呼ばれる形式の構造に関する比較のみであったため、この期間にそれらの関係節が修飾しうる主名詞との意味関係を検討し、類型化することを目指した。多くのバントゥ諸語に類似した構造の「関係節」と呼べる名詞修飾節が見られるが、それを用いて修飾できる名詞の意味関係の範囲は言語によって異なっている。「内の関係」と「外の関係」に分け、さらに「内の関係」を主語とそれ以外の項、「外の関係」を内容補充関係と因果関係、計4つの領域に分け、関係節を用いて修飾できる名詞の範囲を検討した。その結果6つのタイプに類型化できた。この結果は6月にヘルシンキ大学で開催された第6回国際バントゥ諸語学会で報告した。 それ以降は、関係節を用いることができない意味関係にある名詞を修飾する場合にどのような形式が用いられるのかを中心に調査を行った。その結果、関係節を用いて修飾できる主名詞との意味関係が同じタイプに分類される言語であっても、関係節を用いることができない名詞の修飾に用いられる形式は同じではなく、そこにもさまざまなバリエーションがあることがわかってきた。この結果は12月に開催された日本言語学会をはじめとする学会や研究会等で発表した。この調査・分析は今後も続けていく必要があるが、バントゥ諸語の名詞修飾構文の形式と意味に見られる多様性がより具体的になってきたことは大きな成果であると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
28年度は、本プロジェクトの基盤となった昨年度までの科研プロジェクト「バントゥ諸語における名詞修飾形式と意味関係に関する記述言語学的研究」の成果のまとめと再検討から始めて、名詞修飾節の形式と意味の類型化、そこからさらに名詞補文と動詞補文との連続性を検討するという計画を立てていた。 ところが、28年度の前半がSOAS国際プロジェクトの客員メンバーとして共同研究を行ったことで、予定よりも多くの時間を名詞修飾節の形式と意味の検討と類型化に費やすことになった。そのため、当初予定していた名詞補文と動詞補文との連続性に関しては、関連するデータを収集したにとどまり、十分な分析には至らなかった。 しかしながら、名詞修飾節の形式と意味の類型化に関しては、計画していたよりも多くの言語を対象にすることができ、それによって期待以上の成果をだすことができた。また、ロンドン大学に研究拠点を置いてSOAS国際プロジェクトの客員メンバーとして共同研究を行ったことで、国際研究者交流はこれまで以上に密になった。さらに、複数の国際共同研究を新たにスタートさせることもできた。 これらを考えあわせると、おおむね計画どおり順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度がおおむね順調に進展してきたことから、今後も予定どおりに研究を進めていく。これまでどおりデータの補充と分析を行うことはもちろんであるが、28年度に新たな国際共同研究をスタートさせたこと、また30年度にアフリカ言語学の重要な国際学会が2つ開催されることに鑑み、29年度と30年度は、国際共同研究と成果発表に特に重点的に行う。 ①データ補充と分析:29年度はウガンダとタンザニア、30年度はナミビアとザンビアで、それぞれ5週間程度の現地調査を行う予定である。これまでと同様に現地調査までに前年度の調査結果と分析のまとめ、それを基にして補充すべきデータの割り出しと新たなデータ収集のための例文リスト作成等を行う。また国内の研究協力者と研究会を定期的に開催して情報交換とデータの検討を行う。 ②国際共同研究:28年度にスタートした国際共同研究をさらに進めていく。29年度は、5月に共同研究の打合せをロンドン大学SOASにおいて行う。6月はロンドン大学で開催されるSOAS国際プロジェクトのワークショップに参加する。9月にはタンザニアにおいて、SOAS国際プロジェクトと共同でワークショップを開催する。また10月から3ヶ月間、SOAS国際プロジェクトのメンバーのひとりを外国人特別研究員として受け入れ、共同研究を進める。さらにその間に大阪でバントゥ諸語のマイクロバリエーションの国際ワークショップを開催する。30年度は、これらの国際共同研究の成果を具体的な論文の形にしていくことに重点を置く。 ③成果発表:毎年開催されるアフリカ学会と春・秋の日本言語学会のほか、30年は、7月に南アフリカにおいて世界言語学者会議と第7回国際バントゥ諸語学会、8月にモロッコにおいて第9回世界アフリカ言語学会議が開催される。今後は、これらの学会での成果発表とそのための準備を進めていく。
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[Book] The conjoint/disjoint alternation in Bantu. (Chapter 15: Conjoint/Disjoint Distinction and Focus in Matengo (N13).)2017
Author(s)
Larry Hyman, Jenneke van der Wal, Koen Bostoen, Toni Cook, Denis Creissels, Maud Devos , Ines Fiedler, Hannah Gibson, Claire Halpert, Andriana Koumbarou, Nancy C. Kula, Sophie Manus, Lutz Marten, Yukiko Morimoto, Jean Paul Ngoboka, Ernest Nshemezimana, Nobuko Yoneda, Jochen Zeller, Sabine Zerbian.
Total Pages
458 (426-452)
Publisher
Berlin: Mouton de Gruyter
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[Book] Levels in clause linkage. A crosslinguistics survey. (Chapter 19: Herero)2017
Author(s)
Shiho Ebihara, Atsuhiko Kato, Kazuhiro Kawachi, Kim Eunae, Kazuyuki Kiryu, Yasuhiro Kojima, Tadataka Nagai, Midori Osumi, Kan Sasaki, Satoko Shirai, Kiyoko Takahashi, Mie Tsunoda, Tasaku Tsunoda, Yoshiho Yasugi, Nobuko Yoneda.
Total Pages
印刷中
Publisher
Berlin & Boston: De Gruyter Mouton