2017 Fiscal Year Research-status Report
バントゥ諸語における従属節の形式と意味に関する比較研究
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16K02627
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
米田 信子 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 教授 (90352955)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | バントゥ諸語 / 国際共同研究 / 国際研究者交流 / マイクロ・バリエーション / 従属節 / 名詞修飾構文 / 条件節 |
Outline of Annual Research Achievements |
29年度は、以下の研究を中心に行った。 ①名詞修飾構文および動詞補文に関する研究:名詞修飾構文については新たなデータも加えて12言語に見られるバリエーションに関して研究会や学会で発表し、論文にまとめた。動詞補文のデータを新たに収集することで、名詞補文にいわゆる「関係節」を用いることができない言語では、名詞補文と動詞補文に同じ補文マーカーが用いられる傾向があることが明らかになった。また、名詞修飾構文を体言化の視点から捉えなおして論文にまとめ、採択された。 ②国際共同研究:ロンドン大学SOASで共同研究者Judith Nakayiza氏とガンダ語の複文に関するデータの確認、2018年8月にモロッコで開催される第9回世界アフリカ言語学会議(WOCAL)での共同発表の応募要旨の作成、多重目的語構文における目的語接辞の振る舞いについての共著論文の最終確認を行った。発表も論文も採択された。 6月にはロンドン大学SOASを拠点とする国際プロジェクト“Morphosyntactic variation in Bantu: Typology, contact and change”のワークショップに参加し、報告と今後の共同研究の打合せをした。10月から3か月間はロンドン大学SOASからHannah Gibson氏を迎え、28年度から進めていたスワヒリ語のreduplicationとverb doublingに関する論文の共同執筆と条件節に関する共同研究を行った。論文は30年度9月に発表される予定である。 ③国際学会での成果発表の準備:2018年度7月に南アフリカで開催される世界言語学者会議(ICL20)と国際バントゥ諸語学会(Sintu7)、8月にモロッコで開催される世界アフリカ言語学会議(WOCAL9)で成果発表を行うため、合計5件の応募用アブストラクトを作成した。いずれも採択された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、1年目である28年度に、①本プロジェクトの基盤となった前科研プロジェクト「バントゥ諸語における名詞修飾形式と意味関係に関する記述言語学的研究」の成果のまとめ、②名詞修飾節の形式と意味の類型化、③名詞補文と動詞補文との連続性の検討を行い、2年目からは副詞節の検討を始めることになっていた。ところが(昨年度の報告書でも述べたことであるが)28年度のサバティカル期間中にロンドン大学SOASの国際プロジェクトの客員メンバーとして共同研究を行ったことで名詞修飾構文の形式と意味の検討および類型化に予定よりも多くの時間を費やすことになった。そのため当初予定していた③名詞補文と動詞補文との連続性の研究についてデータ収集で終わってしまい、その分析は29年度に行うことになった。そのため、当初の計画に比べると遅れをとってしまったが、それでも29年度に予定していた副詞節に関するデータ収集を開始することができ、条件節のマイクロ・バリエーションに関する国際共同研究をスタートすることもできた。また29年度は、名詞修飾構文関係の論文を複数発表することができたほか、30年度の国際学会に向けて準備してきた5件の発表が採択された。28年度の計画の遅れについても、名詞修飾節の形式と意味の類型化に予定していた以上の時間をかけてしまったが、それによって計画していたよりも多くの言語を対象にすることができ、期待以上の成果をだすことができた。さらに複数の国際共同研究を新たにスタートさせることができたことも計画していた以上の成果である。これらを考えあわせると、おおむね計画どおり順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
30年度は本プロジェクトの最終年度でもあり、またアフリカ言語学にとって重要な国際学会が集中していることから、成果発表とその準備を中心に研究を進める。 ①成果発表:成果発表を行う予定の学会は、5月:日本アフリカ学会(北海道大学)、7月:世界言語学者会議、国際バントゥ諸語学会(いずれもケープタウン、南アフリカ)、8月:世界アフリカ言語学会議(ラバト、モロッコ)、11月:バントゥ祖語に関する国際ワークショップ(テルビューレン、ベルギー)である。また、バントゥ諸語の名詞修飾構文および動詞補文に見られるマイクロ・バリエーションに関する論文を執筆する。 ②データ補充と分析:7月に南アフリカで開催される2つの学会の間の1週間を用いて、隣国ナミビアでクヮニャマ語とヘレロ語の調査を行う。今年度は国際学会が多いため、この1週間以外にアフリカでまとまった現地調査を行う時間を確保することが難しい。そこで国際学会の機会を用いて、参加しているアフリカ人研究者に協力してもらって彼らの母語のデータを可能な限り収集する。また国内の研究協力者と研究会を定期的に開催して情報交換とデータの検討を行う。 ③国際共同研究:国際バントゥ諸語学会と世界アフリカ言語学会での共同発表の研究打ち合わせのため5月に英国とドイツに渡航する。また29年度に開始した条件節のマイクロ・バリエーションに関する研究を進める。これについては国際学会中の空き時間を有効に用いて研究打ち合わせを行う。
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Causes of Carryover |
公務のため参加を予定していた国際学会に参加しなかったため次年度使用額が生じた。30年度は11月にベルギーで国際ワークショップが開催されるが、これは当初の計画になかったものなので、29年度の残金をベルギーで開催されるこの国際ワークショップの旅費に充てる。
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Research Products
(16 results)
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[Book] Handbook of Japanese Contrastive Linguistics (Handbooks of Japanese language and linguistics 6)2018
Author(s)
PARDESHI, Prashant, Taro KAGEYAMA, Masayoshi SHIBATANI, Ryuichi WASHIO, Sung-Yeo CHUNG, Atsuhiko KATO, Li SHEN, Yuu KURIBAYASHI, Anna BUGAEVA, Yo MATSUMOTO, Kiyoko TAKAHASHI, Kazuhiro KAWACHI, Yoshiko MATSUMOTO, Bernard COMRIE, Nobuko YONEDA, and other 12
Total Pages
722
Publisher
Berlin: de Gruyter Mouton
ISBN
978-1-61451-407-7
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[Book] Levels in Clause Linkage: A crosslinguistic survey2018
Author(s)
TSUNODA Tasaku, Shiho EBIHARA, Atsuhiko KATO, Kazuhiro KAWACHI, Kim EUNAE, Kazuyuki KIRYU, Yasuhiro KOJIMA, Tadataka NAGAI, Midori OSUMI, Kan SASAKI, Satoko SHIRAI, Kiyoko TAKAHASHI, Mie TSUNODA, Yoshiho YASUGI, Nobuko YONEDA
Total Pages
892
Publisher
Berlin: de Gruyter Mouton
ISBN
978-3-11-051677-7