2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K02634
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
山崎 雅人 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (00241498)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 視覚動詞の試行相文法化 / 漂白化 / 保持化 / 主観化 / 間主観化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度の研究成果を論文として出版することになったほか、二度の全国規模の学会において研究発表を行った。すなわち、前年度の研究対象であるアルタイ諸語のうち満洲語文語の視覚動詞の試行相文法化については、五月に満族史研究会第32回大会(2018年5月26日 於早稲田大学戸山キャンパス)において口頭発表を行い、活発な質疑を行った。その内容をさらに進展させて、9月に中国北京市社会科学院満学研究所発刊の『満学論叢』第七号に投稿し、査読の結果、掲載が決定し、2018年中に出版する予定である。 本年度の研究対象である中国語については、日本中国語学会第67回全国大会(2018年11月11日 於中央大学多摩キャンパス)において研究発表を行い、この時も活発な質疑を得ることができた。その内容をさらに進展させて、3月に『言語情報学研究』第14号に掲載した。さらに、前年度の研究対象であるアルタイ諸語のうちのモンゴル語については、3月までに発表内容をまとめることにより、本年5月19日に早稲田大学において開催される日本モンゴル学会2018年春季大会で研究発表を行うことが決定している。 下の「今後の研究の推進方策」の欄にも書いたが、本年6月の日本言語学会での研究発表はベトナム語の視覚動詞の試行相文法化についての内容であるが、その発表申込は3月であり、その時点までに研究発表の骨子を組み立て、ベトナム語の母語話者に対するデータの確認まで行ったことは、本年度の研究成果の一部と見なすことができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は、初年度の平成28年にアルタイ諸語を対象とする研究を終えて、二年目に中国語を主とする研究に移行する予定であったが、満洲・ツングース語族の満洲語文語とモンゴル語族のモンゴル語については、それぞれの専門家が集う全国規模の学会において、当該現象を主題とする研究発表を行ったか、もしくは行う予定にあることで一定の段階を経たと見なせるが、もうひとつの言語族であるチュルク語族については国内にこの言語を専門とする学会がないため、研究成果の発表が完遂できていないことから、「やや遅れている」と判断した。こうした事情を考案し、海外の学会であるSeoul International Alaistic ConferenceやPermanent International Alaistic Conferenceなどの国際学会において、斯学の研究成果の発表を検討している。 上欄の「研究実績の概要」で書いたように、二年目の研究対象である中国語については、口頭による研究発表とその論文化は順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は当初の計画通り、東南アジア諸言語の視覚動詞の試行相文法化を対象とする研究を行う。すでに本年6月23日に東京大学本郷キャンパスで開催される日本言語学会第156回大会において、「ベトナム語の視覚動詞の試行相文法化の展開」として研究発表を行うことが決定している。当該地域では、この他にタイ語・ラオ語、クメール語(カンボジア語)、ビルマ語がこの現象を有するために、今後の研究対象となる。ただし、目下の研究対象であるベトナム語は母語話者が所属機関の大学に留学生として複数名が所属しており、その調査協力を得られたが、他の東南アジア諸言語ではタイ語を除いて、母語話者を得ることが必ずしも容易ではない環境から、まずは周辺諸大学を手始めに長期的に母語話者との交流ルートを構築して行くように努力して行く。 なお、所属機関の大学院に、本年度は中国人留学生が漢族二名に加えてモンゴル族一名が入学したため、彼らを中国語とモンゴル語の母語話者として、それぞれの言語における視覚動詞の試行相文法化現象を調査することができると考える。 認知言語学の理論的研究は、引き続き日本認知言語学会における研究発表を通して、最新の研究手法に積極的に接することで、本研究の分析に適用できるよう努めて行く考えである。
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Causes of Carryover |
本年度は主たる物品費が満洲語文語文献の購入にとどまったため、上記の次年度使用額にある金額となった。また、旅費は日本認知言語学会が近隣の大阪大学で開催され、五月の満族史研究会のための東京出張が主な支出先となったことから、費用に多くはかからなかった。 引き続き、認知言語学関係図書とアジア諸言語の言語資料の入手に加えて、日本言語学会や日本モンゴル学会などの関係学会への参加のために、必要な額を支出する予定である。
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Research Products
(4 results)