2016 Fiscal Year Research-status Report
OV・VO言語の方言に見られる類型横断的特性:文末に語用標識を伴う構文化を中心に
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16K02637
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Research Institution | Fuji Women's University |
Principal Investigator |
井筒 美津子 藤女子大学, 文学部, 准教授 (00438334)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | final-tag construction / 文末詞 / 語用標識 / 構文化 / 右方周縁部 / 変異語用論 / 類型論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、構文化の観点から、日本語と英語の諸方言に見られる語用標識(pragmatic marker)の文末詞化を考察し、そこに見出される類型横断的な特性を明らかにすることを目的とする。具体的には、1. 英語諸方言について、pragmatic marker の文末用法に関する量的・質的調査を実施し、方言的差異を明らかにする。同様に、2. 日本語諸方言についても量的・質的調査を行い、日本語の文末要素の方言的多様性を考察する。それらを踏まえて、3. 双方の言語の方言に見出されるfinal-tag construction の拡張性について、言語横断的な比較を試みる。 1年目の平成28年度は、1について英語諸方言(特にアメリカ英語とアイルランド英語)のコーパス(Santa Barbara CorpusとSPICE-Ireland)を用いた量的調査を実施した。この調査により、タイプとトークン双方の点で、アイルランド英語の方がfinal-tag constructionの構文化が進んでいることを明らかにした。この成果は、フランス・ルアンで行われた2nd International Conference on Grammaticalization: Theory and Data で発表し、発表内容を論文としてまとめ、海外の学術図書に出版予定である(現在査読中)。 また、西欧の諸言語における文末詞等の非項要素(non-argument elements)の研究動向に着目し、近年提唱されている理論(thetical grammar, macro grammar)の文献調査を行い、日本語や英語の文末詞の観点から、それらの再解釈を試みている。 さらに、文末詞(終助詞)が持つ独話性の観点から、日本におけるツイッター普及の問題を考察し、英語との比較によるデータ分析も行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定されていた英語諸方言(特に、アメリカ英語とアイルランド英語)のpragmatic markerの文末詞化とfinal-tag constructionの構文化について、量的研究を実施し、その成果を論文にまとめることができた。これは、本研究の最終目的である文末詞化の類型横断的考察の基軸の一つを成すと共に、次年度に予定しているアンケートやインタビュー調査を行う上での重要な言語資料を提供するものである。従って、研究計画全体に照らすと、平成28年度は概ね順調に研究計画を実施することができたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は英語諸方言(特にアメリカ英語とアイルランド英語)のpragmatic markerの文末詞化について、アンケートやインタビューによる質的調査を実施する予定である。アイルランド英語に関しては、7月に北アイルランド・ベルファストで行われる第15回国際語用論学会への参加の折に、現地での調査を実施する計画である。アメリカ英語に関しては、日本在住のアメリカ人を対象に調査を行う予定である。これらの調査が予定通り進まなかった場合には、海外調査を含めた追加調査を行う可能性もあり得る。 また、本年度行ったthetical grammarやmacro grammarの文献調査を基に、文末詞などの非項要素(non-argument elements)の規則性について、第15回国際語用論学会で発表する予定である。 さらに、日本語の文末詞の研究も進め、日本におけるツイッター普及と日本語の文末詞(終助詞)等が持つ独話的・対話的機能との関係について、7月にエストニア・タルトゥで行われる第14回国際認知言語学会で発表する予定である。 北アイルランドとエストニアで行われる学会は、連携研究者である井筒勝信も参加する予定である。これらの学会の渡航費の一部は、平成28年度の予算で執行した。
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Causes of Carryover |
初年度に計画していたアメリカ英語とアイルランド英語のコーパスを用いた量的研究の成果発表をフランスで開催された国際学会で行ったが、海外出張の性質上、内定前に旅費等の手配を行なわなければならず、初年度予算で執行することが出来なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は二つの国際学会(第14回国際認知言語学会・第15回国際語用論学会)への参加を予定している(それぞれ、研究代表者・連携研究者計二名分)。これらの学会参加に関わる経費の一部は、平成28年度に執行しているが、未精算の学会参加費や宿泊費は平成29年度予算で計上する予定である。また、その以外の調査旅費、物品購入などの支出も予定している。
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