2019 Fiscal Year Research-status Report
OV・VO言語の方言に見られる類型横断的特性:文末に語用標識を伴う構文化を中心に
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16K02637
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Research Institution | Fuji Women's University |
Principal Investigator |
井筒 美津子 藤女子大学, 文学部, 教授 (00438334)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | final-tag construction / 文末詞 / 語用標識 / 構文化 / 右方周縁部 / 変異語用論 / 類型論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、構文化の観点から、日本語と英語の諸方言に見られる語用標識(pragmatic marker)の文末詞化について類型論的考察を行うことを目的とする。具体的には、(1)英語諸方言について、語用標識の文末用法に関する量的・質的調査を実施し、方言的差異を明らかにする。(2)日本語諸方言についても、同様の調査を実施する。それらを踏まえ、(3)二つの言語の方言に見出されるfinal-tag constructionの拡張性について、言語横断的な比較を試みる。 本年度は、(1)に関連した研究として、第16回国際語用論学会のワークショップで口頭発表を行い、日本語を始めとする東アジア諸言語(2018年、ドイツ・ロストックにおける学会発表)と同様に、英語の文末に現れる語用標識(pragmatic marker)の連鎖にも類似した順序性が見られることを指摘した。 (2)については、昨年度の予備調査の結果、日本語では語用標識の文末詞化に際だった方言的差異が認められなかったため、言語類型論的に類似している日本語と韓国語のfinal-appended structureの対照研究を行った。その研究成果は、3月にフランスで開催される学会(Gramm3)で発表する予定であったが、コロナウィルスの影響で学会が来年度に延期された。 この調査の結果から、(3)に関わるfinal-tag constructionの定着化は、少なくとも日本語と韓国語において、英語の方言に見られるような差異が観察されることが明らかになりつつある。 さらに、文末詞研究の一環として、平成30年度に口頭発表を行った、情報構造等の観点から日本語の終助詞と間投助詞の違いについて分析した研究成果を英語論文として発表した。また、日本語の文末表現等が有する独話性と日本のツイッター普及の問題に関する論文を執筆し、国際雑誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に計画されていた英語方言(特に、アメリカ英語とアイルランド英語)の語用標識(pragmatic marker)の文末詞化とfinal-tag constructionの構文化について、コーパスを用いた量的研究を実施し、英語論文として発表することが出来た。この研究結果を踏まえ、アメリカ英語・アイルランド英語の母語話者を対象に、発話末に現れるpragmatic marker(特に、soとbut)の解釈に関するアンケートとインタビュー調査を実施し、その成果を平成30年度に開催された国際学会で口頭発表することが出来た。 また、令和元年度は、アメリカ英語の文末に生じる複数の語用標識の順序性について、大規模コーパス(COCA)を用いた研究を実施し、国際学会で成果発表をすることができた。これら以外にも、日本語の文末詞に関する複数の研究成果を英語論文という形で出版した。 日本語諸方言(北海道、東京、大阪)の語用標識の文末用法については、方言コーパスを用いた予備調査を実施したが、英語の方言(アイルランド英語・米語)に見られるほどfinal-tag constructionの定着化の差異が観察されなかった。しかし、本年度は調査対象を言語類型論的に類似している日本語と韓国語に変更し、対照研究を行った結果、二つの言語にはfinal-appended structure(述部後に何らかの要素が存在している構造)における定着化の差異が見られることが明らかになりつつある。 以上のことから、研究計画全体に照らすと、本研究課題は概ね順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、昨年度末に発表することができなかった日本語と韓国語のfinal-appended structureに関する研究の成果を、国際学会、あるいは英語論文という形で発表する計画である。この研究は日本語小説とその韓国語翻訳の対照研究であるが、これに加え、本年度は韓国語小説と日本語翻訳の対照研究も実施し、その成果を国際学会か英語論文という形で発表する予定である。これらの発表は、研究協力者との共同研究であることから、研究代表者・協力者の学会参加等に係わる諸経費を令和2年度予算から計上する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスの影響により、令和2年3月に参加予定であったフランスでの学会が延期になったため、次年度使用額が生じた。現在の国際情勢では、今後の国際学会の開催可能性について予見することはできないが、可能であれば、本年度も国際学会での成果発表を行いたいと考えている。
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Research Products
(3 results)