• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2019 Fiscal Year Research-status Report

動詞の多義性と文法化の理論的記述・分析-命題的意味、非命題的意味、視点的意味―

Research Project

Project/Area Number 16K02652
Research InstitutionKyushu International University

Principal Investigator

日高 俊夫  九州国際大学, 現代ビジネス学部, 教授 (50737525)

Project Period (FY) 2016-04-01 – 2021-03-31
Keywords複雑述語 / 複合動詞 / 観察可能性 / 命題的意味 / 非命題的意味 / 推意 / 特質構造 / 視点
Outline of Annual Research Achievements

イベントの開始付近を表す「V-始める」「V-かける」「V-だす」と、終了時付近を表す「V-切る」をこれまで主に分析してきた。特に「V-かける」と「V-切る」は、先行研究では一律にアスペクトとして分析されてきたが、実際は意味的にも統語的にもモダリティとして分析されるべき用法があるという共通の発見があり、両者について、アスペクトとモダリティを分ける概念が「観察可能性」であるという知見を得た。以上を形式化し、JSAA (Japanese Studies Association of Australia)年次大会(2019年7月、メルボルン)にて発表した。
また、日本言語学会第156回大会での発表内容を大幅に改訂し、『統語構造と語彙の多角的研究ー岸本秀樹教授還暦記念論文集ー』(于一楽 他(編)、開拓社)に論文として収録、出版した。内容としては、解決すべき問題として「3 者の意味の違い」「「 V - 出す」「V - 始める」と異なる形成過程を持つと考えられる「V -て来る」が,どうして同様に開始の意味を表すのか」という疑問を立て、前者については、それぞれの使い分けは、語彙概念構造等で表されるべき意味だけでなく、視点や、あるいは慣習的推意のような非命題的意味にもよることを示した。また、後者に関しては、「V-て来る」が実質的に複合動詞と同様の形態統語構造を持つことを示し、話者(の共感焦点)が,変化前後の2点を結びつけて変化を認定すること、開始前からすでに終了時に視座を置くことにより当該イベントの発生を予期するという慣習的推意が生じることを主張した。
さらに、同学会157回大会での発表内容に基づき、イギリス英語におけるhave gotの語彙化に伴うと考えられる語用論的機能を考察し、論文としてまとめ発表した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

4: Progress in research has been delayed.

Reason

昨年度から続く役職に伴う大学改革等の業務と、大学異動(九州国際大学から武庫川女子大学へ)に伴う業務等が重なり、相対的にエフォートが低下したことが遅れている主な原因である。そのため、1年間の延長申請を行い、承認されている。

Strategy for Future Research Activity

まず、研究の集大成となるべく、これまでの研究を極力齟齬のない形でまとめていきたい。特に、現時点では、非命題的意味であるTELICやAGENTIVEといった特質構造の中の記述の基準が必ずしも厳密な基準に沿ってなされているとは言えない可能性が残っていると考えており、ともすれば分析対象の(補助)動詞によって若干の齟齬がある恐れがあると考えている。そこの部分の定義を明確にすると同時に形式化を厳密にし、分析に統一性を持たせることが研究の一般性につながると同時に、理論的には非常に重要になると思われる。
また、同時に、イベントの終了付近を表す「-てしまう」「-終わる」「-終える」「-尽くす」「-抜く」等の中で、特にこれまで分析してきた「-切る」と非常に類似した意味を持つと思われる「-抜く」「-尽くす」について考察していく。通時的な視点からの分析も望まれるが、現時点の見通しとしては、まずは共時的視点からの分析を行い、全体を統一的に扱えるように調整した上で通時的な問題についても考察していきたいと考えている。
最終的な見通しとしては、イベントの開始付近や終了付近は、それぞれ「開始」「終了」の認定に対して主観の入る余地が比較的大きく、その「主観」の具体的意味(推意を含む)は、当該補助動詞が文法化の過程を経て本動詞から受け継いだものであるという見通しを持っている。その、本動詞から補助動詞に至る多義性の派生過程を描き出すことも重要な課題であると考える。裏返せば、文法化を経ていないアスペクト専用の動詞は主観的判断の入る余地が相対的に少ないことになる。イベントの途中に関しては、比較的主観の入る余地は少ないと思われるので、文法化・語彙化を経たものであってもモダリティとしてはたらきにくいと予測されるが、その予測に対する検証も課題である。

Causes of Carryover

役職に伴う学内業務の繁忙と大学異動に関係する業務等のため研究の進捗状況が芳しくなく、それに伴い物品購入も滞ったり、秋の学会発表への応募が適わなかったことが最も大きな原因である。また、年度末に予定していた出張が新型コロナウィルスの蔓延により中止になったことも次年度使用額が理由である。
新型コロナウィルスが未だ収束せず、教育業務も遠隔授業で行うこととになり、その準備等で忙殺されているのが実情ではあるが、今後の使用計画としては、例年通りの物品購入や出張に加えて、当初の予定通り、海外論文雑誌に投稿したいと考えているので、それに関連する英語論文校閲のための謝金等にも充てたいと考えている。

  • Research Products

    (3 results)

All 2020 2019

All Journal Article (1 results) (of which Open Access: 1 results) Presentation (1 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] 所有を表すhave gotについての語用論的分析2019

    • Author(s)
      日高俊夫、今西真弓
    • Journal Title

      国際・経済論集

      Volume: 5 Pages: 178-194

    • Open Access
  • [Presentation] The interface of aspect and modality on event edges: a case study of the Japanese subsidiary verbs kake- and kir-2019

    • Author(s)
      Toshio HIDAKA
    • Organizer
      Japanese Studies Association of Australia (JSAA)
    • Int'l Joint Research
  • [Book] 統語構造と語彙の多角的研究2020

    • Author(s)
      于 一楽、江口 清子、木戸 康人、眞野 美穂
    • Total Pages
      384
    • Publisher
      開拓社
    • ISBN
      978-4758922838

URL: 

Published: 2021-01-27  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi