2016 Fiscal Year Research-status Report
「『経験』と『知識』に基づく文法」構築のための機能類型論的国際共同研究
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16K02656
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
田中 愼 千葉大学, 国際教養学部, 教授 (50236593)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | コピュラ / categorical judgement / thetic judgement / 心態詞 / 証拠性 / inference / assumption |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度は,『経験』と『知識』という二分法を,これまでの言語研究において提案されてきたさまざまな概念と突き合わせて,本研究の核となる概念である「経験と知識の言語化」をより明確に規定すべく,以下の機会について国際共同研究を行った。 28年8月:ドイツ,ミュンヘン大学Leiss, Abraham両教授およびParawang, Kurita両博士とともに数回にわたり会合を持ち,研究論集の編集を行った。同論集の中心となるテーマは,「言語においてどのように『経験』と『知識』のコード化が行われているか」ということであるが,この問題について,特にコピュラ文,存在表現などを中心に日独対照の研究を進めた。 28年10月:日本独文学会秋季研究発表会にて,シンポジウム『心態詞はなぜ使われるのか? ― 心態詞の出現する状況と認知」というテーマで議論を進めた。その際,心態詞を,話し手と聞き手の間にある『経験』と『知識』の差を埋める言語的標識として位置付け,議論を進めた。 29年2月:千葉大学人文社会研究科にて,プロジェクト論集『証拠性表現としての推量の分類 InferenceとAssumption』を編集,出版した。この論集においては,『経験』に基づく推論であるInferenceと『知識』に基づく推論Assumptionの言語的実現形式について,ドイツ語,日本語,英語,中国語,タイ語などのデータをもとに分析を進め,本研究における理論的枠組みの強化を目指した。 29年2月:ミュンヘン大学Leiss, Abraham両教授,東京外大藤縄准教授と,日本語,ドイツ語における二重判断(categorical judgement)と単純判断(thetic judgement)の対照分析を集中的に行った。これらの概念は,本研究の主題である『経験』と『知識』の言語化に大きく関わっている課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の研究遂行のための国際研究グループの中核を成すミュンヘン大学のLeiss, Abraham両教授,東京外大の藤縄准教授らと共同論文の執筆を進めながら,メール上のみならず直接会合を持ち,集中的に議論をすることができたことにより,本研究の課題解決に向けて大きな進展を遂げることができた。 また,国内の各種研究集会,研究プロジェクトにおいて,本研究の課題である「『経験』と『知識』の言語化」に関する言語現象(心態詞,各種証拠性表現)を幅広く取り扱うことに成功し,本研究の理論的枠組みの記述において大きく前進した。 上に挙げた議論は,すでにいくつかの論文にまとめられ,発表されているが,これらの論文についての議論をきっかけに,あらたな課題が浮かびあがり,それらについての国際的な共同研究のプロジェクトが進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように,ミュンヘン大学Leiss, Abraham両教授,東京外大の藤縄准教授らとともに,特に二重判断,単純判断の日独対照を進めつつ,各種国際研究集会での発表や論文の公刊に向けて具体的に話が進行している。以下にその計画の概要を述べる。 29年9月:日本独文学会言語学ゼミナールにて,二重判断,単純判断についての研究発表を計画しているが,その際,藤縄准教授(東京外大),Meienborn教授(ドイツ,チュービンゲン大)らと集中的な議論を行う予定である。 29年9月:東京外大の研究ワークショップで,藤縄准教授,尾上名誉教授(東京大)らと二重判断,単純判断についてのシンポジウムを行う予定である。 29年12月:オーストリア言語学会(Klagenfurt)で,ミュンヘン大学Leiss, Abraham両教授,東京外大の藤縄准教授らとともに,二重判断,単純判断についてのシンポジウムを開催する予定である。 30年8月:ヨーロッパ言語学会(SLE,エストニア,ターリンにて開催)で,ミュンヘン大学Leiss, Abraham両教授,東京外大の藤縄准教授らとともに,二重判断,単純判断についてのシンポジウムを開催する予定である。 これらの国際研究集会等を通して,本計画研究を着実に実行していく予定である。
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Causes of Carryover |
成果物に関する原稿校閲の謝金を申請予定であったが,作業が本年度中に終わらなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上述の次年度前半期に実施予定。
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