2017 Fiscal Year Research-status Report
ニジェール・コンゴ語族における動詞構造の形態・統語論比較研究
Project/Area Number |
16K02672
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小森 淳子 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 准教授 (10376824)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米田 信子 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 教授 (90352955)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | ニジェール・コンゴ語族 / 統語論 / 形態論 / バントゥ諸語 / スワヒリ語 / ヨルバ語 / バンバラ語 / 受動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ニジェール・コンゴ語族における動詞の形態と統語に関する比較研究をおこなうことを目的としている。今年度は受動態を取り上げ、ニジェール・コンゴ語族全体の言語を対象に比較研究をおこなった。文献からのデータが入手可能な言語を広く調査、研究したが、特にバントゥ諸語とヨルバ語、バンバラ語について詳細に検討した。 バントゥ諸語については、研究分担者である米田教授がタンザニアで現地調査をおこなった。バントゥ諸語は動詞の派生形が発達しており、受動態についても、受動形を用いることが一般的であると考えられている。しかし、広くバントゥ諸語を調査、研究してみると、受動形を用いて受動文を作るよりも、能動形のまま、主語を非人称代名詞にする、いわゆる「非人称主語受動文」の方がより一般的であることが分かった。「非人称主語受動文」は、バントゥ諸語をはじめとして、ヨルバ語など広くニジェール・コンゴ語族一般に見られる形式である。 一方、ニジェール・コンゴ語族の下位分類の中でも、一番早く分岐したと考えられるマンデ語派では、一般的な「受動文」が見られない。バンバラ語を例に見ると、他動詞の目的語が主語になる点は一般的な受動文に似た統語関係であるが、動詞の形態が能動形のままである点が特異である。これは、バンバラ語の他動詞が、「殺す」や「殴る」などの典型的な他動詞でさえ、すべて自動詞としても用いられることから可能になっている。動詞の形態と統語の関係を考えると、ニジェール・コンゴ語族全体で、動詞の形態的な変化による統語関係の標示から、動詞の形態変化なしに統語関係を標示する方向への変化が推測される。今年度の研究では、ニジェール・コンゴ語族の動詞の形態と統語の関係を「受動態」から検討し、その関係を明らかにする端緒を見出すことができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対象とする言語の文献調査や現地調査はおおむね順調に進んでいる。近年では、バントゥ諸語に関する記述文法書が多数、出されるようになり、我々自身が現地調査するだけでは到底及ばないような数の言語を調査、研究することができるようになっている。研究費による文献の購入、現地調査での記述研究、比較研究からの議論、学会発表、論文執筆など、ほぼ当初の計画通りに進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進計画としては、昨年度に引き続き受動態に関する研究を行いながら、さらに使役態や適用態についても広く調査、研究していく予定である。いずれの態についても、バントゥ諸語では動詞派生形を用いるが、他のニジェール・コンゴ語族の言語では派生形は減退し、統語構造で同様の意味を表すことになる。派生形と統語構造との相関関係を観察し、ニジェール・コンゴ語族全体の動詞構造と統語についての関係を明らかにしていく。また、最終年度として包括的な研究のまとめをおこなっていく。
|
Causes of Carryover |
人件費や謝金に計上していた予算を執行する必要がなかったため。 翌年度についても、人件費や謝金を執行する予定がないため、物品費や旅費に当てる予定である。
|
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Book] Levels in Clause Linkage: A crosslinguistic survey (Yoneda, Nobuko “Herero.”)2018
Author(s)
TSUNODA Tasaku, Shiho EBIHARA, Atsuhiko KATO, Kazuhiro KAWACHI, Kim EUNAE, Kazuyuki KIRYU, Yasuhiro KOJIMA, Tadataka NAGAI, Midori OSUMI, Kan SASAKI, Satoko SHIRAI, Kiyoko TAKAHASHI, Mie TSUNODA, Yoshiho YASUGI, Nobuko YONEDA
Total Pages
892
Publisher
de Gruyter Mouton
ISBN
978-3-11-051677-7
-
[Book] Handbook of Japanese Contrastive Linguistics (Handbooks of Japanese language and linguistics 6) (Yoneda, Nobuko "Noun-modifying constructions in Swahili and Japanese.")2018
Author(s)
PARDESHI, Prashant, Taro KAGEYAMA, Masayoshi SHIBATANI, Ryuichi WASHIO, Sung-Yeo CHUNG, Atsuhiko KATO, Li SHEN, Yuu KURIBAYASHI, Anna BUGAEVA, Yo MATSUMOTO, Kiyoko TAKAHASHI, Kazuhiro KAWACHI, Yoshiko MATSUMOTO, Bernard COMRIE, Nobuko YONEDA, 他12名
Total Pages
722
Publisher
de Gruyter Mouton
ISBN
978-1-61451-407-7