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2017 Fiscal Year Research-status Report

実証的データに基づくユカギール語の通時的研究の開拓

Research Project

Project/Area Number 16K02675
Research InstitutionWakayama University

Principal Investigator

遠藤 史  和歌山大学, 学内共同利用施設等, 理事 (20203672)

Project Period (FY) 2016-04-01 – 2021-03-31
Keywordsユカギール語 / 通時的研究 / 電子コーパス / 引用構文 / 伝聞法
Outline of Annual Research Achievements

帝政ロシア時代の民族学者Waldemar Jochelson(以下ヨヘリソンと記す)による19世紀末のユカギール語の記録に関係する資料の収集を継続した。ユカギール民族誌(1926年刊)およびユカギール民話テキスト集(1900年刊)は昨年度収集しているので、これらに基づいて、ヨヘリソンによるユカギール語の記録の電子コーパス化を順次進めつつ、コンピュータで可読なデータを蓄積する過程を進めた。
電子コーパス化と並行して、これらのユカギール語の記録の原文をもとに、19世紀におけるユカギール語の文法構造を共時的な観点から分析する作業を昨年度に引き続いて進めた。
今年度は特に、ヨヘリソン自身の記述がそれほど詳しくなく、また用例が多いとはいえないが、民話テキストにしばしば現れて重要な役割を果たす動詞接尾辞-l'el(ヨヘリソンの用語では伝聞法)に注目し、主としてユカギール民族誌に収録された民話テキスト群を中心に、詳細な分析を進めた。その結果、現代のコリマ・ユカギール語の当該形式との顕著な相違点が明らかになったので、両者の用例を対照し、それぞれの特徴を明確にするとともに、この二者の間に起こったと考えられるこの動詞接尾辞の用法の発達について、通時的観点から考察を進めた。これにより得た仮説を論文にまとめ学術雑誌に投稿した(次年度掲載予定)。
また、昨年度の研究成果である引用構文およびその歴史的発達について、文体論的観点からまとめた考察がロシア国内の学術書に掲載された。これは現地(ヤクーチア)の研究者コミュニティーの求めに応じたもので、現地との一層の研究交流に資するものと考えている。
研究計画の後半で展開する予定である、通時的変化とその要因に向けた研究の基礎を築くべく、高い水準の理論化が見られる英語史などの分野における文献の収集を継続し、そこに含まれている理論的・方法論的観点の検討を進めた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

帝政ロシア時代の民族学者Waldemar Jochelson(以下ヨヘリソンと記す)による19世紀末のユカギール語の記録に関する資料の収集に着手し、ユカギール民族誌(1926年刊)およびユカギール民話テキスト集(1900年刊)をすでに入手し、これらに基づいて、ユカギール語の記録の電子コーパス化を順次進めつつ、コンピュータで可読なデータを蓄積する過程を順調に継続している点で、計画が円滑に進行していると判断する。
記録の電子コーパス化の進展と並行し、19世紀におけるユカギール語の文法構造の共時的な観点からの分析を継続している点が計画通りに行われている。ヨヘリソン自身のユカギール語文法の概略の論文(1905年刊)を考察の出発点としつつも、その記述が不明確な点などを補うべく分析を進めた点も計画に則っている。
今年度において特に研究が進展した領域は、ヨヘリソン自身の記述がそれほど詳しくなく、また自身の文法の中においても用例が多いとはいえないが、民話テキストにしばしば現れて重要な役割を果たす動詞接尾辞-l'el(ヨヘリソン自身の用語では伝聞法)の用法の歴史的発達である。とりわけこの領域に関して、より詳細な分析を進めることができたこと、また、現代のコリマ・ユカギール語のとも対照し、それぞれの特徴を明確にすることができたこととともに、当該構文の発達について通時的観点から考察を進めることができ、論文投稿につながったことは、今年度における研究の順調な発展を示していると考えられる。また、昨年度の研究成果の一部である引用構文の歴史的発達についての論文がロシア国内の学術書に掲載されたことも、研究の順調な進展を示している。

Strategy for Future Research Activity

民族学者ヨヘリソンによる19世紀末のユカギール語の記録に関係する資料の収集の試みを継続するとともに、それらの記録の電子コーパス化をさらに継続する。
これらの資料に基づいて、19世紀末のユカギール語の文法構造の分析を、共時的な観点から進め、さらに深化させる。特に、ヨヘリソン自身も詳しく検討していない文法の詳細や、まだ用例が不足している点などを中心に検討を進め、修正作業を継続する。
あわせて、地理的方言や社会的方言についての検討も並行して進めていきたい。
昨年度に引き続き、研究計画の後半で展開する通時的変化とその要因に向けた研究の基礎を築くため、高い水準の通時的研究がすでに展開されている英語史などの分野における理論的文献の収集を継続し、それらが達成している理論的・方法論的観点の検討を深める。
上記と並行して、今後は周辺の北方諸言語や北方ユーラシア諸言語等の研究にも目配りし、言語の地域特徴等の観点に着目して検討を進めるほか、注目すべき歴史的研究があればそれらの成果を将来的に参照すべく文献収集と検討を進めていきたい。

Causes of Carryover

(理由)
次年度において研究計画と関連する言語類型論関係の文献が複数出版されるという情報を入手した。ハンドブック等大部なものが予定されており、価格も高めになることが十分予想されるので、来年度に若干使用額を残すことにより、当該資料を確実に入手したうえで、次年度あらかじめ予定している研究活動の円滑な実施も可能となるよう、財政的基盤を整えておきたいと考える。
(使用計画)
次年度において予定されている、研究計画と関連する言語類型論関係の文献を確実に入手して、研究に役立てるため、次年度に若干使用額を残すことにより、当該資料を確実に入手したうえで、研究活動の円滑な実施が可能となるよう、財政的基盤を整える。

  • Research Products

    (2 results)

All 2018 2017

All Journal Article (1 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] コリマ・ユカギール語の動詞接尾辞 -l’elの用法の歴史的変化について2018

    • Author(s)
      遠藤 史
    • Journal Title

      経済理論

      Volume: 392 Pages: 印刷中

  • [Book] Fol'klor paleoaziatskix narodov2017

    • Author(s)
      A. N. Alekseev (ed.), Missonova, L.I., Zoriktuev B.R., Bravina R.I., Ivanova-Inarova Z.I., Petrova S.I., Zhukova L.I., Nemirovskij A.A., Fubito Endo, et al.
    • Total Pages
      400
    • Publisher
      RIO Media-Xoldinga: Yakutsk
    • ISBN
      978-5-471-00678-2

URL: 

Published: 2018-12-17  

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