2016 Fiscal Year Research-status Report
中国甘粛・青海省におけるモンゴル系の危機言語、河湟語の調査研究
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16K02679
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
佐藤 暢治 広島大学, 北京研究センター, 教授 (90263657)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
角道 正佳 大阪大学, 日本語日本文化教育センター, 名誉教授 (30144538)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | モンゴル系言語 / 河湟語 / 保安語 / 土族語 / 危機言語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究目的のひとつは、中国の甘粛、青海省で話されているモンゴル系の危機言語である河湟語、そのなかでも保安語積石山方言と土族語の全体像を明らかにすることになる。 保安語積石山方言を担当した佐藤は、2017年3月に現地調査を行い、保安語積石山方言の民話、語彙、文法を調査収集した。研究成果としては、『保安語漢語詞典』(民族出版社)を保安族の若手研究者である馬沛霆と公刊した。本辞典は保安語積石山方言世界初の本格的な辞典である。表記は中国式のローマ字であるピイインに準拠しており、約2100語を収めている。また、日本言語学会153回大会にて、口頭発表「保安語積石山方言の話し手は文が表す事態をどのように捉えているのか」を行い、保安語積石山方言が文末の同私語あるいは助動詞を用い、文が表す事態を話し手の個人的な体験の関与を軸に、自己中心か、それとも非自己・他者中心に捉えていることを明らかにした。そのほかにも、「保安語積石山方言における一人称複数代名詞の包括形と除外形」という論文にて、保安語積石山方言の一人称複数の包括形と除外形における通時的変化を明らかにした。 土族語を担当した角道は、2016年日本モンゴル学会秋季大会にて、口頭発表「モンゴル諸語における語幹末のn」を行い、隠れたnが存在する言語と隠れたnが存在しない言語が存在することを明らかにした。土族語は前者、土族語を除く河湟語は後者に属する。また、2016年度ユーラシア言語研究コンソーシアム年次総会にて、口頭発表「河湟語及び達斡尓語の従属節主語表示」を行い、モンゴル語と違って河湟語では従属節の主語が属格や対格で表示されることが非常に少ないことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
保安語積石山方言、及び土族語の研究とも、これまで論じられていない、あるいは明らかにされないまま残されていた課題のいくつかが解明されてきている。個々の言語の研究のみならず、モンゴル系言語の研究においても、多大な貢献にある。 また、こうした研究成果の積み重ねは一般言語学への貢献も期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度も、2016年度と同様に研究を推進していく。 保安語関積石山方言については辞典で用いたピンインも字を用いた民話集の作成を計画している。土族語もであるが、モンゴル系言語、あるいは言語学の研究の発展につながる研究をすすめていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用として残された多くは、角道の物品費である。研究に必要な物品など、次年度に効果的に使用することを踏まえて、残されている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究に不可欠な物品を効果的に購入する予定である。
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