2016 Fiscal Year Research-status Report
中国語方言学の領域における語源辞典編纂の試み―びん東区方言の身体名称語を例に
Project/Area Number |
16K02681
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
秋谷 裕幸 愛媛大学, 法文学部, 教授 (10263964)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | びん東区方言 / 語源辞典 / 比較辞典 / びん語 / 語彙史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の申請書に記載した平成28年度の研究計画は、『びん語びん東区方言詞源詞典(身体部位部分)』編纂に必要なデータを、福建省福清、寿寧、屏南方言三方言について収集することであった。 このうち屏南方言の現地調査を4-5月、8月、12-1月と三回実施した。調査内容は『方言調査字表』(中国社会科学院)、600語+補足単語約2500語、100例文の調査である。この方言は13個の短母音が音素として区別される、非常に調査の難しい方言であった。三回の調査により、当初の目的はおおむね達成された。同音字表もほぼ完成した。 なお、福清方言については、平成27年度2月に調査する機会があったので今年度は実施しなかった。寿寧方言については調査は実施しなかった。 また申請書に記載した計画通り、11月12-13日に立命館アジア太平洋大学で行われた日本中国語学会第66回全国大会に参加し、口頭発表「びん東区方言的“bo子”義詞」を行った。この発表ではびん東区方言における「首」を意味する語を網羅的に収集し、南部で「du骨」、北部で「du管」が分布することを示した上で、祖語として単音節の「du」を再構し、南部と北部で独自に二音節化が生じたと推定した。その過程で、びん東区方言ばかりではなくびん北区方言等のデータを援用することによりより説得的な変化過程を推定できることも明らかになった。 なお、本研究課題の構想を論じた論文「編纂漢語方言比較詞典的設想――以《びん東区方言比較詞典》為例」を中国で発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上の研究実績の概要で述べたように、ほぼ本研究課題の申請書に記載した計画通りに平成28年度については研究が進捗しているから。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も本研究科代の申請書に記載した研究計画の則って研究を進める。 平成29年度については福清、寿寧、屏南三方言の調査をさらに行い、それらの言語データを公表できるレベルにまで仕上げる。 また『びん語びん東区方言詞源詞典(身体部位部分)』の執筆を開始する。平成28年度中に「首」「頭」は完成させている。本年度はまず「口」「歯」「唇」「舌」「ひげ」五語の執筆に取り組み、その成果は6月10-11日に中国蕪湖で行われる「第二届漢語方言中生年国際高端論壇」で発表する。また11月11日-12日に中央大学で開催される第67回日本中国語学会全国大会にも出席し、「腹」「へそ」について研究発表を行う。 『びん語びん東区方言詞源詞典(身体部位部分)』編纂にあたっては、びん東区方言の隣接して分布するびん北区方言とのデータが必要になるケースがある。そこで、今後は隣接地区の方言についても簡単な調査を経費と研究時間の許す範囲で実施する。
|
Causes of Carryover |
本研究課題では中国におけるフィールドワークを行うが、航空チケットの価格を事前に確実に知ることが困難なため誤差が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続き中国におけるフィールドワークを行うため、その経費に充当する。
|
Research Products
(1 results)