2017 Fiscal Year Research-status Report
チベット・ビルマ語派ルイ語群の未記述方言調査によるルイ祖語の研究
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16K02691
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤原 敬介 京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (00569105)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | チベット・ビルマ語派ルイ語群 / 記述言語学 / 方言調査 / 基礎語彙調査 / 死語 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年5月、2017年8月および2017年12月から2018年1月にかけてビルマに渡航し、2016年3月に出版したCak-English-Bangla dictionaryに対してビルマ語訳をつけることを中心とした増補改訂作業をおこなった。また、2017年9月にバングラデシュに渡航し、同辞書の増補改訂作業をおこなった。そして、ビルマ側のチャック語(サック語)を中心に数百語の語彙を追加することができた。また、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所の高島淳教授に依頼し、チャック文字をLaTeXであつかうチャック語TeXを開発していただくことができた。 2017年11月には中国・北京で開催された第50回国際漢蔵語学会に参加し、ルイ諸語において音節末に閉鎖音が付加する現象について口頭発表をおこなった。この口頭発表は、6月に日本言語学会でおこなった発表を改訂したものである。2017年12月にはルイ諸語とボロ・ガロ諸語との声調対応についての口頭発表をおこなった。 2018年1月にはインド・アッサム州・シルチャルで開催された第10回東北インド言語学会に参加し、チャクパ語の系統にかんする口頭発表をおこなった。その後2018年2月にインド・マニプール州に渡航し、死語であるチャクパ語パイェン方言の調査をおこなうとともに、アンドロ方言の資料を収集した。 2018年3月にビルマに渡航し、ザガイン管区ホーマリン地方でカドゥー語およびガナン語の方言調査をおこなった。ホーマリン地方のカドゥー語は、モークワン・カドゥー語の変種であることがわかった。ガナン語は、バマウッ地方のガナン語とおおきなちがいはないことがわかった。 おもな研究成果としては、チャック語の会話文資料をまとめたもののほか、チャック語のなぞなぞや諺をまとめたものなどがある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
チャック語については、Cak-English-Bangla dictionaryに対してビルマ語訳をつける作業を開始した。その過程で、バングラデシュ側のチャック語とビルマ側のチャック語(サック語)の相違がよりあきらかになってきている。あらたな語彙を収集することもできた。また、チャック語TeXが完成したことにより、チャック文字を見出し語につけるめどがついてきた。 ルイ語群の未記述方言調査については、ホーマリン地方のカドゥー語とガナン語について基礎語彙調査をおこない、どのカドゥー語やガナン語の変種とちかい関係にあるかをあきらかにすることができた。 チャクパ語については、インドでパイェン語方言とアンドロ語方言について新資料を収集することができた。 以上のべたように、これまでの調査経験をふまえて堅実な成果をあげていくとともに、あらたな調査地域でも基礎語彙調査をおこない、新資料を収集できたので、研究はおおむね順調にすすんでいるとかんがえられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もひきつづきCak-English-Bangla dictionaryの改訂作業を継続していく。特にビルマ語訳をつけ、チャック文字の見出し語をつけることに注力する。そのために、バングラデシュとビルマに2018年5月、8月、9月に渡航することを計画している。 ルイ語群の未記述方言調査については、ビルマ・ザガイン管区ホーマリン地方での臨地調査を継続するとともに、インドー地方、さらにカチン州に渡航し、基礎語彙調査を中心とした方言記述を継続する。そのために2019年2月から3月にかけて渡航することを計画している。 チャクパ語については、これまでに収集した資料を整理し、内容を検討する必要がある。
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