2018 Fiscal Year Research-status Report
日本現存朝鮮古刊本の調査とその語学的・書誌学的研究
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16K02696
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Research Institution | Reitaku University |
Principal Investigator |
藤本 幸夫 麗澤大学, 研究センター, その他 (70093458)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 朝鮮文献学 / 中国文献学 / 日本文献学 / 活字 / 木版 / 刻手 / 出版文化 / 訓読 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本には朝鮮古書が古代以降極めて多数存在し、その中には韓国など本国で既に失われた古刊本や善本が多い。従来それらが網羅的に厳密な書誌学的観点から、調査研究されたことはない。筆者は50年程前から1910年以前に朝鮮で出版または手写された書を対象にして全冊に目を通し、各冊に調査項目最大28項目を設定、調査研究を実施してきた。 明治期に西洋文明が流入し、日本に伝存した古書が多数外国に流失した。朝鮮本では、イギリス外交官アーネスト・サトウに購入された大英図書館本、中国人学者楊守敬購入による台湾故宮図書館本があり、実に善本が多く、これらも日本現存本に準じて調査した。 朝鮮古書の中には中国本の重刊本が多いが、その中には中国で既に失われた書や系統の異なる書が朝鮮本として伝わるものがあり、又日本には古代に仏教書などが多く伝えられ、その後も続々と流入している。その中には日本で写本或いは刊本の形で伝わり、朝鮮では失われたものが多数ある。また江戸初期には朝鮮本を藍本とした和刻本が多く出版され、日本の学術の発展に大いに貢献した。従って朝鮮本の研究は単に朝鮮学に貢献するだけではなく、中国学・日本学にも貢献するところが多く、今後は東アジア的な視点から朝鮮本を再評価しなければならない。 筆者は約50年間の業績を基に、2007年に『日本現存朝鮮本研究 集部』(京都大学学術出版会)を出版し、その後教育活動で出版に手間取ったが、2018年には『日本現存朝鮮本研究 史部』(東国大学出版会)を出した。いずれも約3000部を収め、A4版、上下2段、1400頁前後である。現在は教育活動から離れたため、全力で次の子部・経部・補遺編の原稿作成に力を注いでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本に伝存する朝鮮本を調査研究しているが、約50年継続し、ほぼ9割以上の調査は終えていると思われる。然しまだ未調査があり、それらの調査を引き続き継続している。 今年度は早稲田大学を完了し、東京大學・京都大学・天理大学・静嘉堂文庫文庫では、調査を継続している。約250部の調査を終えた。 1部につき、28項目を設定しているため、調査に時間がかかる。調査項目が少なければ、結局従来の調査のように不十分な目録になり、又他の人が重ねて調査をしなければならない。筆者は従来の調査を検討して28項目を定めた。これによって、書籍の形がほぼ髣髴として見えるようになった。 調査を終えた資料については、諸目録・諸研究書等を活用して入力原稿を作成している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで朝鮮本を約50年間調査・研究し続け、整理・入力した後、専門の上記研究書2冊を出しているので、方法論は確定しており、着実に且つ正確に調査を今後も継続するのみである。 昨年度末に朝鮮本を含む江戸時代の大きなコレクションが公開されると聞き、今後その調査を予定しているが、時には思いもかけぬ朗報があり、今後も期待される。
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Causes of Carryover |
残金は、来年度の消耗品購入や旅費等に充当する。
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