2018 Fiscal Year Research-status Report
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16K02698
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
猿橋 順子 青山学院大学, 国際政治経済学部, 教授 (10407695)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 多言語 / フェスティバル / グローバリゼーション / 言語政策 / 言語管理 / ディスコース分析 / エスノグラフィー / 公共空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、収集した国フェスデータの分析に取り組み、学術的知見としてまとめた。主だった研究テーマは以下の二点で、それぞれ国際学会で発表を行った。 第一に、国フェスには貧困や紛争など、対象国の負の面も紹介される場面が見られることから、ハレの実践であるフェスティバルに文化実践が持ち込まれる際のディスコースの変異に注目した分析を行った。ミャンマー祭りにおけるタナカ(日焼け止め)の紹介事例から、支援場面では「素朴」あるいは「無垢」な子ども達に付随するものとして表現されていたものが、祭り会場では「天然素材」や「美白」など、日本にすでに流通している美のディスコースに結びつけられている様が確認された。両者に矛盾こそないものの、強調される側面にシフトが認められ、文化実践の紹介過程における意味づけの変容が認められた。 第二に、地名を表す語の用いられ方に注目した分析を行った。フェスティバルでは国名の他にも、首都や大都市、観光地、紛争地、支援の必要な地域など、あらゆる地名が紹介される。また、日本国内での諸活動との関連から日本の都市名や地名も広く紹介される。両国の地名の扱われ方は同じではなく、日本の地名の方が詳細に、対象国の地名は大まかに表現されていることが明らかとなった。対象国の地理的特徴を、フェスティバル会場に持ち込む営みも確認され、様々な地理的概念が錯綜してフェスティバル会場が演出されていることが認められた。 これらに加え、デジタルコミュニケーションと実際のフェスティバル場の関連については、国フェスと今日的特徴としてまとめ、論文を刊行した。また、当該国の言語使用について伝達・象徴・媒介機能の観点からまとめた分析を国内の研究会で発表した。さらに、国フェスに見られる言語政策的営為、およびバイリンガル場面とトランスランゲージング場面の推移の分析については学会誌に投稿したところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フィールドワークで収集した膨大なデータの整理が懸案であったが、整理規則を定め、データベース化を実行した。その結果、データ検索等も簡易になり、データ分析に効率的に活用できるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
口頭発表を終えた研究テーマについて、鋭意文章化して学術論文として刊行する。今回の研究の課題や限界をまとめ、今後の研究の展望へとつなげる。
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Causes of Carryover |
年度末の出張旅費が見積りよりも若干低額であったため、次年度使用額が生じた。次年度も引き続き論文の刊行や学会発表を行うため、英文校正や学会参加費に充てる。
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Research Products
(5 results)