2019 Fiscal Year Annual Research Report
The construction of multilingual public spaces and the interaction orders
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16K02698
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
猿橋 順子 青山学院大学, 国際政治経済学部, 教授 (10407695)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マルチリンガリズム / 相互作用秩序 / 公共空間 / 国フェス / 言語政策 / 言語管理 / エスノグラフィ / 国際コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は多言語・多文化・多目的の公共空間となる国際的な側面を含むイベント(以下、「国フェス」)におけるコミュニケーション秩序の形成について事例研究を通して接近することを目的に取り組んだ。最終年度は、これまでの研究活動を通して得られた知見を振り返り、相互の関連性と今後の課題と展望を概観した。 研究期間全体を通じて得られた知見は、全体的な傾向と事例研究に基づくものに大別される。全体的な傾向としては、多言語公共空間の管理は、実際の「国フェス」の会場に加え、公式HPやSNS(「デジタルフェス場」)を通して、ある程度事前の秩序形成が出来ていること、そこでは多言語・多民族国家であっても、より代表的なひとつの言語に収斂されやすい傾向、日常的には言語に関連する事業を行っていない組織・団体でも「国フェス」では言語を文化資源として活動が展開される傾向が高まることなどを指摘した。 事例研究からは、台湾フェスティバルの舞台で、多言語話者の演者(歌手)が聴衆の言語・文化背景について未知であることから展開する、複数のコミュニケーション方略と、その段階的修正のプロセスを抽出した。また、アイルランドフェスティバルでの演者(楽器奏者)の事例から、一言語話者の演者が説明をする場合には、隣接ジャンルを参照していくために、その文化に馴染みのない者にとっては説明がむしろ難解になる傾向を指摘した。またカンボジアフェスティバルの事例からは、フェスティバルという機会に馴染みにくい社会問題などを知ってもらうために、言語を題材とした活動が迂回路となって機能している様子に注目した。 全体的な傾向としては、商業活動の優先・隆盛や、代表的な言語・文化への収斂が認められるが、事例研究で丁寧に見ていくことで、既存のパワー関係や言語地位関係が是正されたり、より少数派の言語が活用されている実践を見出し得た。
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Research Products
(2 results)