2017 Fiscal Year Research-status Report
インドネシア、スラウェシ島中・南部の非フィリピン系の語群に対する重点的研究
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16K02710
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
山口 真佐夫 摂南大学, 外国語学部, 教授 (00191239)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | スラウェシ島の言語 / スラウェシ島の語群 / フィリピン系語群 / 非フィリピン系語群 / サルアン・バンガイ語群 / 地域語教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、8月12日~9月2日に、最新の研究資料の収集、現地研究者との意見交換を行うために、インドネシア共和国、南スラウェシ州の州都マカッサルMakassar、中スラウェシ州の州都パル市、中スラウェシ州東部のルウックLuwuk市および首都のジャカルタ市を訪れた。 南スラウェシ州の州都マカッサルMakassarにおいては、文部教育省Kementerian Pendidikan dan Kebudayaan、言語庁Badan Bahasaの支部である南・西スラウェシ州言語研究所Balai Bahasa Provinsi Sulawesi Selatan dan Provinsi Sulawesi Baratにおいて同研究所の雑誌と書籍を収集した。中スラウェシ州の州都パル市では言語庁の支部である中スラウェシ州言語研究所Balai Bahasa Provinsi Sulawesi Baratを訪問し、同研究所の雑誌と書籍を収集した。さらに、これまで研究資料が多くなかったサルアン・バンガイ語群の言語状況を実際に視察するための、中スラウェシ州東部のルウックLuwuk市を訪れた。同市では地域語の使用状況を視察したほか、現地の文部教育省の支所の好意で中学校における地域語(サルアンSaluan語とバランタックBalantak語)教育の試行授業を視察することができた。 今回は地域語教育についても資料収集を行っている。パル市ではカイリ・レドKaili Ledo語、マカッサル市ではブギスBugis語とマカッサルMakassar語の教科書を収集した。ルウック市では今後行われる地域語教育のために2017年5月に行われたシンポジウムの資料を収集することができた。これらの地域語教育の状況については学会で研究発表を行い、また現在論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、インドネシア共和国のスラウェシ島に存在する非フィリピン系の語群についての研究である。アメリカの言語研究組織であるSILは、本研究の申請時にはスラウェシ島に存在するサンギルSangir語群、ミナハサMinahasa語群、ゴロンタロGorontalo語群はフィリピン系の語群としていた。しかしその後、サンギル語群、ミナハサ語群はフィリピン系の語群ではなく、マラヨ・ポリネシア語派から直接分岐した語群として扱うようになった。そのためSILに従えばスラウェシ島に存在するフィリピン系の語群はゴロンタロ語群のみということになる。この点については平成28年度にゴロンタロ州を訪れ資料を収集した。この点は本研究にとって重要な点であるので、その結果は平成28年度に学会発表し、その後学術論文として学会誌に投稿し平成29年度に掲載された。このスラウェシ島のフィリピン系の語群の問題については現在、スラウェシ島に存在するすべての語群とフィリピンに存在するフィリピン系の言語との比較研究を進めている。 現在、現地研究者の論文を載せるための論集を計画中であるが、進展がやや遅れているので今年度中に終えられるようにする必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度には、現在すすめているスラウェシ島に存在するすべての語群とフィリピンに存在するフィリピン系の言語との比較研究を進め、学会発表あるいは論文として成果を発表する予定である。比較言語学の基本に則り、音韻対応を中心に研究を進めていくことになる。この研究のためには、本科学研究費で収集したスラウェシ島に存在する言語の資料も用いて精緻な研究を行っていく予定である。この研究を通じてフィリピン系と非フィリピン系の弁別基準を構築する予定である。 現時点の計画としては、研究資料が不足しているサンギル語群、ミナハサ語群の資料収集のために北スラウェシ州マナド市にある言語庁の支部である北スラウェシ州言語研究所Balai Bahasa Provinsi Sulawesi Utaraを訪れる予定である。また東南スラウェシ州、南スラウェシ州、ジャカルタでも資料収集を行う予定である。 成果発表としては、論集の出版以外に、これまでに収集したスラウェシ島の地域語に関するインドネシアで出版された単行本、学術雑誌等に掲載された論文に、平成30年度に収集したものを加えて文献目録を出版する予定である。現地で出版された文献に関しては、現地以外で知ることが難しいので、この文献目録は今後の研究に役立つものと思われる。さらに学会での研究発表、論文の執筆も行う予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、平成29年度の招聘する予定だった現地研究者の勤務地が移動したため、招聘することができなくなったため。また、平成29年度中に出版する予定であった研究成果のまとめが遅れているため。 使用計画は、平成29年度の次年度使用額は平成30年度の計画に基づいて使用される予定である。
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