2018 Fiscal Year Research-status Report
インドネシア、スラウェシ島中・南部の非フィリピン系の語群に対する重点的研究
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16K02710
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
山口 真佐夫 摂南大学, 外国語学部, 教授 (00191239)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 非フィリピン系の語群 / フィリピン系の語群 / サンギル語群 / ミナハサ語群 / ゴロンタロ・モンゴンドウ語群 / スラウェシの言語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の申請時にはSILによるethnologue18版(2015年)、19版(2016年)に基づいてフィリピン系、非フィリピン系を設定し、インドネシア、スラウェシ島中・南部の非フィリピン系の語群に対する研究を行うことにした。ethnologue18版、19版ではマラヨ・ポリネシア語派の下にフィリピン上位語群が存在して、その中にサンギル語群、ミナハサ語群およびグレーター・セントラル・フィリピン語群(その下位語群にゴロンタロ・モンゴンドウ語群)が存在していた。そして、それらの3語群を除いたスラウェシ島中・南部の語群を対象に研究を始めた。しかし、ethnologue20版(2017年)以降はフィリピン上位語群がなくなり、上記の3語群はマラヨ・ポリネシア語派に直結する語群となった。本研究では「スラウェシ島中・南部の非フィリピン系の語群」が対象になるために、あらためてフィリピン系、非フィリピン系の弁別が重要になった。以上のことから、本年度は、SILによる内容が20版において大幅に改訂されたことによる修正を行うことを中心に研究を行った。比較言語学の基本である音韻対応に基づき、フィリピン系とされたことがあるサンギル語群、ミナハサ語群、ゴロンタロ・モンゴンドウ語群およびフィリピンの言語との音韻対応の研究を行った。本年度の研究にはこれまでに本研究で収集したゴロンタロ・モンゴンドウ語群、サルアン・バンガイ語群等の資料も利用した。 これらの研究成果については、フィリピン系、非フィリピン系の弁別について日本の学会で発表を行った。また、これまでの成果の一部をインドネシアでの国際学会で発表した。現在、フィリピンの言語とスラウェシの言語に関する論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、研究開始時の「非フィリピン系の語群」を確定しなおすための作業を行った。これまでにインドネシア共和国、スラウェシ島の中スラウェシ州の言語研究所を通してカイリ・パモナ語群、サルアン・バンガイ語群、南スラウェシ州(西スラウェシ州も管轄)の言語研究所を通しておもに南スラウェシ語群、東南スラウェシ州の言語研究所を通してムナ・ブトン語群、ウォトゥ・ウォリオ語群の言語資料を収集してきた。そして、それらの資料とフィリピンの言語との比較研究を行った。この作業のために研究は1年遅れたが、最終的な成果を出すために不可欠な作業であった。
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Strategy for Future Research Activity |
スラウェシ島のフィリピン系、非フィリピン系を確定するための研究を引き続き行う。そのために、1年延長した最終年度には、スラウェシ島北部、最北部のミナハサ語群、サンギル語群の資料を収集するために北スラウェシ州のマナドにある言語研究所を訪問し、資料収集を行う。これまでの収集資料、新たに収集する資料を基に研究を発展させ、国内での学会発表、インドネシアの学会での発表、論文の執筆・投稿を行う予定である。また、文献目録およびインドネシア、アメリカ、オーストラリア等の研究者の論文を集めたスラウェシ島中・南部の言語に関する論集の出版等の形でも成果を発表する予定である。
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Causes of Carryover |
本研究の申請時において基準にしたSILによるethnologue18版(2015年)、19版(2016年)のフィリピン系、非フィリピン系がethnologue20版(2017年)以降大幅な変更が加えられた。このことにより、本研究の対象である「スラウェシ島中・南部の非フィリピン系の語群」に大きな異同が生じた。本研究の基本的問題であるため平成30年度は、フィリピン系、非フィリピン系を再考する作業を行うことが研究全体のよりよい成果を生むと考えるに至った。 以上のことから、本研究の重要な研究活動であるインドネシアのスラウェシ島に渡航し資料を収集すること、現地研究者との論集を出版する作業等を次年度に繰り越した。そして平成30年度は、フィリピンの言語も対象に加え、本研究の範囲を再検討する研究を行い、研究成果を学会で発表した。 平成30年度に使う予定であった予算は、(海外)旅費およびその他(成果出版)の費用等として、期間を延長のうえ、令和元年に使用することとなった。
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