2018 Fiscal Year Research-status Report
削除現象と比較に関する言語心理学的研究―統語論と意味論の実証を目指して
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16K02712
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
伊藤 益代 福岡大学, 人文学部, 教授 (10289514)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 比較構文 / gradable 形容詞 / 日本語 / 言語獲得 / maximality |
Outline of Annual Research Achievements |
比較構文のうち程度形容詞が主節述部であるもの(例.A is taller than B)について、日本語児4‐6歳児及び大人がどのように解釈するのかについての実験調査は、今回の助成期間中にGALA学会においてポスター発表を行っていた。その内容が、論文として書籍 New Trends in Language Acquisition within the Gerative Perspective (Springer) に掲載されることとなり、査読者や編者とのやり取りを通して、論文の質を高めることができた。 内容: 先行研究では、子供が比較文を誤って形容詞文として解釈している可能性があることが排除されていなかった。本研究では、比較対象(上記A, B)以外のアイテムを刺激に示すことによりこの問題を排除した。また、形容詞文自体も刺激とすることにより、その解釈との比較も行った。 結果、6歳児は大人と同様の解釈ができるが、4歳児(および、5歳児も幾分)はそのようでないことが観察された。全体及び個人データの分析の結果、以下が明らかとなった。1)4歳児の正しい解釈は偶然レベルであった。2)しかし、個人データの統計分析により、個人が偶然レベルの回答をしているのではなく、子供の反応がT反応とF反応に分かれていることが観察された。具体的には、比較文と形容詞文についての解釈に相関関係が見られた。議論としては、程度形容詞が比較文に用いられていることが大人と異なる解釈に関与していることが示されたことより、4-5歳児の比較文解釈が大人と同じでない理由として、程度形容詞が<d, et>でなく、<e,t>として解釈されている可能性を論じた。また、その大きな理由として、意味理論に関わるmaximalityの考えを採用した。このことにより、他の発達言語心理研究結果も説明をすることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の「実施状況報告書」では、書籍への掲載は「予定」としていたが、掲載も確定され、論文の最終版も提出し、その内容も高められたので順調といえるであろう。
遅れは、英語児を対象とした実験であるが、これは個人情報保護の点から同意を得ることが難しいことによる。また、研究代表者が日本にいることもあるであろう。そのため、別の比較構文についてのデータ数を増やすなど、方向を変更させている。
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Strategy for Future Research Activity |
いくつかの別の比較構文について日本語児(および大人)がどのように解釈するのかについては、得られた実験結果の相違点がどのような理由によるものか、比較構文についての言語理論を分析しつつ、その理由を理論的に探る。
英語児については、人数は少ないものの、予備研究としてまとめることも考えている。
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Causes of Carryover |
論文と査読者への回答などに時間がかかり、さらにその過程において、高度な統計解析を要求されたことにより、専門家へ依頼することとなった。そのため、他の実験が遅れ、学会発表への申し込みも遅れている。また、統計解析に関わる支払いも年度を超すこととなった。
したがって、残額は統計解析の支払いと学会発表に主に使用予定である。
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Research Products
(2 results)