2017 Fiscal Year Research-status Report
標準語普及期の地方出身作家の言語に見る標準語受容に関する実証的研究
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16K02716
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
小島 聡子 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (70306249)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 近代日本語 / 方言 / 標準語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、データの整備を進めつつ、解析済みデータを使った分析・考察にも着手した。 まず、データの整備については、収集済みの文献のうち、小川未明の童話集『赤い舩』のテキストデータ化を行った。これは90%程度終了しているがまだ完了はしていない。今後、さらにどの文献をデータ化するべきかを検討しつつ、データ作成を進めていく計画である。 さらに、既に作成したデータについては、既存のプログラムを利用して形態素解析を行うとともに、解析済みのデータを手作業で確認しより確実なものとなるよう整備した。なお、小川未明のデータについては、入力が済んだものから順に、テキストデータを検索する形の簡易なコーパスとして使えるよう形式を整え、他の宮沢賢治・浜田広介・巌谷小波のデータと合わせ『近代童話コーパス』(暫定・未公開)として一括検索ができるようにした。 また、形態素解析済みのデータの分析・考察は、特に宮沢賢治の言葉遣いと方言の関係についてを中心に考察した。新たに入手した岩手県の方言に関する資料等のデータや、国立国語研究所において公開されている『日本語歴史コーパス 明治・大正編 雑誌』のデータ等も活用して分析した結果、宮沢賢治の作品にみられる「くらい」という語の使い方に方言の影響が色濃くみられることを指摘した。「くらい」については既に指摘したことがあるが、方言との影響については分析が行き届いていなかったため、今回改めて考察し、明らかに出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、勤務先の組織改編も少しずつ落ち着いてきたため、比較的順調に進めることが出来たものの、昨年度の遅れを取り戻すほどには進捗していないため。
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Strategy for Future Research Activity |
さらに童話作家を二人程度データ化するほか、同時期のプロレタリア文学の作品、特に地方出身で地方を中心に活動していた作家の作品を収集しデータ化を進める予定である。それによって、近代の標準語と方言のせめぎあいの一端を明らかにすることができると考える。
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Causes of Carryover |
本年度は計画通りではあったが、前年度(2016年度)での遅れを取り戻すには至らず、その分を使い切るには至らなかったため、次年度に持ち越している。 なお、次年度では、当初の計画に合わせるよう、データの作成に力を入れる計画である。
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