2019 Fiscal Year Research-status Report
標準語普及期の地方出身作家の言語に見る標準語受容に関する実証的研究
Project/Area Number |
16K02716
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
小島 聡子 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (70306249)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 近代日本語 / 宮沢賢治 / 標準語 / コーパス / 児童文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、大正期から昭和前期にかけて活躍した地方出身の作家の書いた「標準語」を分析して、「標準語」の浸透過程を考えることを目的とするが、今期は、児童文学のこれまでに収集した地方出身作家による児童文学作品のテキストデータからタグ付きのコーパスを作成する作業を進めた。 特に、今期は、坪田譲治の作品についてのデータ化を進めた。坪田譲治は、小川未明・浜田広介とともに「児童文学界の三種の神器」と呼ばれる初期の児童文学をけん引した作家にである。坪田譲治の作品のデータ化により、既に、データ化を進めている小川未明・浜田広介、さらに宮沢賢治も合わせて、大正期から昭和戦前期の児童文学の中心的作品について一通りのデータ化が出来たことになる。ただし、テキストデータ化及び大まかな形態素解析は済ませたものの、細かいタグの修正については未完成であり、今後の作業が必要である。 さらに、本研究は「子供向けの文体の成立」ということも視野に入れているので、これらのデータを利用して、戦前の子供向けの文体の成立過程について、接続詞を手掛かりに、教科書(国定読本)のデータとの比較をしながら、分析を試みた。 接続詞は、特に書き言葉と話し言葉の文体差や、地域差も大きいことから、当時の「標準語」の状況を考える上では注目すべき語である。また、接続詞は子供の成長過程で比較的遅くに獲得する語で、子供向けの文章をどう意識するかによっても接続詞の使い方に差が出る可能性が考えられる。 その結果、接続詞の使い方でいうと、教科書は明治・大正期は童話との違いが目立つが次第に童話作品の文体に近づくことがわかった。(ただし、この結果について記述した論文は、都合により未刊行である。)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
期間の初期2年間に改組・カリキュラム改変に関わる校務に忙殺され、殆ど当該の研究に携わることが出来ない期間があり、その後も状況はやや改善したものの遅れを取り戻すには至っていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
さらにデータを増やし、分析を進めたい。 特に、資料の分野としては、童話の方に加え、子供の作文等にも視野を広げ、教科書との対応などを含め、子供向けの平易な文体の成立過程を探っていきたい。
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Causes of Carryover |
前年度までの研究の遅れを取り戻すことが出来ないまま、本年度も思うように計画を進めることが出来なかったため、計画を延長することにした。 今年度は、少なくとも、未着手のデータ入力を外部に委託するとともに、既に入力済みのデータについての形態素解析を進め、データを公開可能な形に整備することを目指し、必要な設備を整える。
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