2021 Fiscal Year Research-status Report
標準語普及期の地方出身作家の言語に見る標準語受容に関する実証的研究
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16K02716
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
小島 聡子 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (70306249)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 接続詞 / 国定読本 / 童話 |
Outline of Annual Research Achievements |
コーパスを用いた日本語の歴史を研究する研究グループの近代語についての研究書・論文集に論文執筆者として参加した。 当該の論文は「大正期の子供向け文章の語法―教科書と童話の関係―」(pp.93-114)と題し、標準語普及期である大正期に子供向けに書かれた童話と、子供が標準語を学んだ媒体の一つである教科書(国定読本)との間で、語法にどのような違いがあるのか、接続詞を取り上げて考察したものである。接続詞は、文語由来の語も多く文体による違いが大きく、特に子供向けの平易な「標準語」の文体の確立・浸透の過程を見る際に重要であると考える。本論文では、各資料で接続詞としてどのような語がどのくらい用いられているかを確認した上で、統計的な手法を用いて分析し、資料ごとの接続詞使用についての特徴や資料同士の関係について考察した。 その結果、本研究の対象とした明治末から大正期の童話作品と、同期間に使用されていた国定読本(第1期~第3期)とでは、使われる接続詞のパターンが異なっており、国定読本の接続詞は大人向けの文章に見られる接続詞の使い方に近いことが分かった。一方、本研究の対象作品より後の時期に使用されていた国定読本(第4期・第5期)は、先行する童話作品と同様のパターンを示している。そのことから、少なくとも接続詞については、童話作品の方が先に子供向けの文体における用法を確立し、それが教科書でも踏襲されたように見えることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本務校の校務(カリキュラム改変等)に追われ、研究に集中できなかった。具体的には地方出身の作家の多いジャンルとしてプロレタリア文学の言葉遣いを扱うことを予定していたが、データ化対象作品の絞り込みや入力作業の依頼が遅れデータが完成しておらず、分析が間に合わなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
プロレタリア文学の作品のコーパスデータを作成し、それを用いて童話作品や同時代の文壇の中心作家たちの作品のデータと比較・分析し、標準語の広がりについて考察する。
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Causes of Carryover |
テキストデータの入力の依頼が遅くなり今年度中のデータの完成が見込めなかったため、次年度での完成を予定して作業を依頼する計画である。
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