2018 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of Japanese-Chinese mixture in Senmyo.
Project/Area Number |
16K02729
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
池田 幸恵 中央大学, 文学部, 教授 (10315228)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 宣命 / 公卿日記 / 任大臣 / 宣命コーパス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、宣命の中でも、大臣を任じる際に用いられる「任大臣宣命」を取り上げ、考察を行った。この任大臣の宣命は、『続日本紀』をはじめとする「五国史」や公卿日記に用例があるだけでなく、平安時代の儀式書にも例文が残されており、宣命で使用される語彙の変遷を見るのに最適のものである。 任大臣宣命の初出は『続日本紀』に収められた恵美押勝を太師(太政大臣に相当)に任じる宣命(第26詔)であるが、続日本紀宣命においては、この例をはじめ、すべての宣命が平安時代の儀式書に見られるような定型文とは異なるものの、官職名等を除きほぼ和語で読むことのできるものであった。 平安時代の儀式に収められた定型文と同様の任大臣宣命は、「五国史」宣命においては、『続日本後紀』承和11年7月2日条の源常を左大臣に任じる宣命が初出である。それ以降も「五国史」宣命における任大臣宣命は、任官の事情を語る部分で定型文とは異なる文言が見られるものがあるものの、官職名を除き基本的に和語で読むことができた。 一方、「五国史」より時代の下る公卿日記においては9例の任大臣宣命が収められているが、全文が定型文通りという例は一例もない。それぞれの宣命で使用される語彙を細かく見てみると、定型文を踏襲する箇所については概ね和語で読むことができるものの、誰かの辞退にともなう任大臣であることなど任官の事情を語る部分においては漢語の用例が増えることが明らかになった。また、任大臣に近いものとして摂政や関白に任じる宣命もあるが、これらの宣命は、任大臣宣命以上に漢語の使用が多く、新たな事態に応じ作成される宣命には、漢の要素が強くなることが明らかになった。 また、宣命コーパスの整備も引き続き行っている。
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Research Products
(2 results)