2018 Fiscal Year Annual Research Report
A Research on Syntactic Configurationality of Modern Japanese - in Contrast to Participial Constructions in English -
Project/Area Number |
16K02730
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
大島 資生 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (30213705)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 英語分詞構文 / 統語的階層性 / 連体修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本語における統語的階層性を新たな視点から模索することを目的とした。 具体的な研究方法としては、英語の分詞構文を含んだ用例とその複数の日本語訳を相互に対照することによって、英語・日本語それぞれにおける統語的階層性の具現のしかたを観察・検討した。その結果、英語分詞構文に関して、主節事象と分詞句事象との間の意味関係は多岐にわたり、両者の間には「同じ状況の中で生起する」といった緩やかな関係性が存在することも明らかになった。 他方、日本語には分詞構文ほど幅広い関係性を表現できる形式はない。先行研究で指摘されている通り、古典日本語においては連用形接続・テ形接続などがこれに相当する機能を担っていたと考えられる。階層性という観点からすれば、連用形接続やテ形接続によって事象を並列的に述べる古典日本語は階層的ではなく、構造の平坦さが際立つといえる。 このように考えたとき、分詞構文は、統語的階層性が際立つ構造をもつ英語のなかにあって、あえてより平坦な構造を形成する手段として働いているといえる。実際、英語はSVOという基本語順が厳密に定まっているため、文の早い段階で述語を示す必要がある。つまり、文を開始して主語・述語を述べるとそのあとは目的語や補語を述べて文を打ち切らなければならない。補足や軌道修正が必要になっても、新たに文を立ち上げるほかない。しかし、分詞構文を用いれば、文を終止することなく補足的な情報を加えることができる。このように分詞構文は英語の中で統語的階層性を調整することによって伝達効率を高める機能をもっていると考えることができる。 また、上述の通り本来日本語が好んでいた平坦な構造は場合によっては、文章に単調な印象を与える場合がある。そこで、日本語は連体修飾をはじめ階層的な構造を取り入れることによって構造的なメリハリをつけ、より読みやすい文章を志向するようになったと考えられる。
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