2017 Fiscal Year Research-status Report
類をなさない派生接辞の研究: 英語のa- の定着・衰退・拡散
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16K02754
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
長野 明子 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (90407883)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 英語学 / 派生形態論 / 接辞 / 形容詞 / 主要部 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の目的は、英語の派生形態論のうち、形容詞を派生するタイプに焦点を当てて、その共時的側面と通時的側面の両方について研究を進めることである。特に、形容詞を派生する接辞のなかでも、特に特殊性の高い接頭辞a-について、全容の解明を目指している。 今年度は、① 従来から接頭辞a-と同じように右側主要部規則 (Williams 1981) の反例とされてきた接頭辞en-の共時面と通時面に関する考察、② 英語の派生形容詞の主要タイプの1つである関係形容詞に関する考察を進め、論文として発表した。 まず、①について、長野 (2017) において、to encage, to envisionのような派生動詞の共時面と通時面のそれぞれについてOxford English Dictionary Onlineや大型コーパスからのデータを用いて詳細に考察した。その上で、接頭辞en-が「形態的に複雑な語の主要部はその右側に来る」という右側主要部規則の反例ではないことを実証した。 次に、②について、Nagano (2018) において、(a) a British person vs. (b) a very British personにおける名詞由来派生形容詞の2つの用法と形態的関連性を検討した。(a) のBritishは関係形容詞であるのに対し、(b) のBritishは性質形容詞である。両者の関係は、統語論におけるモダリティ副詞 trueによる修飾によって引き起こされる一種の転換であると結論した。 これら2つの研究を元にして接頭辞a-の位置づけを考えた場合、第1に、a-はen-と異なり右側主要部規則の真の反例である。第2に、a-は「ワンステップで」性質形容詞を派生する接辞であり、Britishのように名詞から関係形容詞を経由して「ツーステップで」性質形容詞を作る過程とは独立している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画を作成した時点で立てた4つの具体的研究課題をほぼ解決することができた。それに加え、当初の計画にはなかった、他の接頭辞との比較や、関係形容詞由来の性質形容詞との比較にも着手することができた。よって、当初の計画以上に進展していると判断してよいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)研究課題最終年度に当たり、研究成果の全容を日本語でまとめた論文を執筆する。 (2)長野 (2016)「英語の接頭辞a-の生産性の変化について」では、生産性という重要概念について考察した。それを基に、生産性に関する研究で著名な海外の研究者との共同研究を行いたいと考えている。今年度はそのための各種準備を行う。
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Causes of Carryover |
書籍の費用と国際学会出張に係る旅費が予定していたほど必要ではなかったため、次年度使用額が生じた。翌年度は、論文執筆とともに国際学会での発表、また、海外の研究者との共同研究の準備を行う。それらのために必要な諸費用として使用する計画である。
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