2017 Fiscal Year Research-status Report
談話における焦点化構文の総合的研究ー統語論と語用論の棲み分けに関する考察
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16K02759
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
加藤 雅啓 上越教育大学, その他部局等, 特命研究員 (00136623)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 右方移動構文 / 場所句倒置文 / 重名詞句移動構文 / tough構文 / 情報の重要度 / pragmaticize / syntacticize |
Outline of Annual Research Achievements |
英語の場所句倒置文、及び重名詞句移動構文(以下、右方移動構文と略記)を取り上げ、生成文法、認知言語学、関連性理論、及び機能文法の枠組みにより、[1] 文献による理論研究、[2]言語資料の収集の方法によって研究を行った。 本年度は、[1] 文献による理論研究については、中島(1995)の主語からの外置の分析に従い、右方移動構文に関する統語論と語用論の棲み分けという観点の可能性を考察した。これに関して、遠藤(2014) は、日本語と英語の理由疑問文の分析から、語用論化 (pragmaticize) よりむしろ統語論化 (syntacticize) の観点からのアプローチのほうが妥当性が高いと主張している。これは統語論と語用論の棲み分けという観点とは相容れない考え方であるため、今後の検討課題としたい。 機能文法の観点からは、右方移動構文がもたらす談話機能のうち、Ziv (1975)の「関係節命題の前景化」説と Gueron (1980)の「提示文」説、高見(1995)の「情報の重要度」説等を取り上げて検討し、これらの分析の妥当性を検証した。高見(1995)の提案する「情報の重要度」は右方移動構文のみならず、tough構文や受動文の分析にも有効であることが明らかになった。 [2]言語資料の収集については、英字新聞、英米文学、映画のスクリプト、及びコミック等から場所句倒置構文、重名詞句移動構文、it分裂文、wh分裂文などの用例を多数収集した。さらに、これらの用例をキーワード検索ができるように加工して、種類ごとに分類した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は、当初、英語の場所句倒置文、及び重名詞句移動構文を取り上げ、生成文法、認知言語学、関連性理論、及び機能文法の枠組みにより、[1] 文献による理論研究、[2]言語資料の収集、[3]データベース作成の三つの方法によって研究を進める予定であったが、生成文法関連図書、認知言語学関連図書、関連性理論関連図書の入手が、絶版や版元での売り切れのため、予定していたスケジュールでの入手が困難となり、文献による理論研究が大幅に遅れることになった。このため、談話における右方移動構文の談話機能の特性、及び認知プロセスと推論メカニズムを明示的に解明することが不可能となった。これに伴い、言語資料のデータベース作成についても実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
統語論と語用論の棲み分けの妥当性を明らかにするため、平成29年度に十分に実施できなかった英語の場所句倒置文、及び重名詞句移動構文を取り上げ、生成文法、認知言語学、関連性理論の枠組みにより、[1] 文献による理論研究、[2]言語資料の収集、[3 ]データベース作成の三つの方法によって研究を進める。 まず、右方移動構文に関する関連性理論、認知言語学のそれぞれの枠組みにおける先行研究を総括する。そのために、これらの分野における従来の研究文献を包括的にサーヴェイする。関連性理論の観点からは、右方移動構文が談話内で果たす談話機能と関連性理論との関わりを検討する。 つぎに、中島(1995)の主語からの外置の分析に従い、右方移動構文に関する統語論と語用論の棲み分けという観点の可能性を考察する。認知言語学の観点からは、右方移動構文に関わる認知言語学における推論メカニズムを考察する。 これらの分析結果を総合的に検討し、談話における右方移動構文の談話機能の特性、及び認知 プロセスと推論メカニズムを総合的にとらえ、これを明示的に解明する。言語資料の収集と分析、及びデータベース作成を行う。
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Causes of Carryover |
(理由)当該年度に購入予定であった生成文法関連図書、認知言語学関連図書、関連性理論関連図書の入手が、絶版や版元での売り切れのため入手が困難となったこと、さらに、欧州におけるテロ等による治安の悪化から、当該年度末に予定していた英国,及び二言語併用国であるスイスにおける文献調査、及び資料収集に関わる旅費を執行することが不可能となったため、88万円を上回る未使用額が生じた。旅費については、受け入れ先であるユニバーシティ・カレッジ・ロンドンからテロ等に巻き込まれないよう注意喚起をされたことにより渡航を控えたことによるものである。 (使用計画)本年度は計画的に書籍購入を行い、さらに昨年度予定していた英国に加え、二言語併用国であるスイスにおいて、焦点化構文に関する文献調査、及び資料収集を行う予定である。受入機関と当該国のテロ情報等を勘案し、研究遂行のため支障のない計画を実行する予定である。
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