2016 Fiscal Year Research-status Report
テクスト・セティングの観点から探る英語の好韻律性について
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16K02763
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
服部 範子 三重大学, 人文学部, 教授 (00198764)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 英語 / 音声学 / 強勢 / リズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、英語のプロソディー的特徴のうちリズムについて、先行研究で提案されているテクスト・セティングの観点から分析を試み、音節配列アルゴリズムでは不備な点を指摘し、英語の歌詞とリズム的強拍とのマッピングの多様性を考察した。 韻律構造は単層ではなく、深層と表層の2つの構造をもち、音節配列アルゴリズムでは一見反例となるシンコペーションは、表層構造において強勢のある音節が本来の強拍の位置から左にシフトしたとみなすテンパーリーらの主張を取り入れ、新しい提案としてテクスト・セティングに句(フレーズ)という単位を導入すると、音節配列アルゴリズムに対する別の種類の反例も説明可能であることを実際の英語の歌の音符と強拍のマッピングを分析することによって示した。 具体的には、強勢のある音節が第1あるいは第3拍に来ることはなく、第2あるいは第4拍に来るときは、形容詞+名詞といった句レベルで強拍の配列を考える必要があることを指摘し、このレベルでは最後の内容語に核が来るという英語のイントネーション句の原則を応用すれば、形容詞+名詞といった名詞句の名詞が最大の強勢を受け、形容詞は次に強い拍となることが推測される。これはすなわち、一般に強勢を受ける形容詞でも楽譜の小節の中で占める位置は、第1拍ではなく第3拍となりうることが問題なく説明できることになる。 英語の好韻律性を示す一つの新しい切り口としてテクスト・セティングを用い、句の概念をどのうように取り込むかが今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
英語のテクスト・セティングについて音節配列アルゴリズムの反例を探し、一つにはテンパーリーらの提案を採用し、もう一つは本研究で提案する句レベルの強勢付与を取り入れると、反例とされるケースが相当数減り、英語の好韻律性を示すのに音節配列アルゴリズムを用いることの有用性を実証できた。本年度中にテクスト・セティングについて短い解説を論文集に掲載することができ、来年度国際学会での発表受理の通知も届いたのでおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は音節配列アルゴリズムで英語の好韻律性を特徴づけるだけでなく、リズムの異なる言語間の、とくに英語と日本語の楽譜において翻訳詞のつけ方を比較・分析することで、言語固有のリズムがテクスト・セティングにどのように反映されるのかを詳細に検討していく。
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Research Products
(2 results)