2021 Fiscal Year Research-status Report
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16K02766
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大森 文子 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 教授 (70213866)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 秀樹 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 教授 (30191787)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Shakespeare / Sonnets / メタファー / 時間認識 / 連句 / メトニミー / 音韻効果 / 擬人化 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はShakespeareの作品を研究対象とした。Sonnetsの中から、末尾の二行連句で逆接の語が示され、それまでの叙述内容が逆転するという論理構造をもつ詩を観察し、内容の逆転に説得力をもたせるためにメタファーがどのように寄与しているのかを考察した。また「時のメタファー」をテーマにした論文では、As You Like It とSonnetsに描かれた〈時〉と人との関わりを表す比喩表現を観察し、従来の認知メタファー論の見解では捉えきれていないShakespeare独特の時間認識およびその認識を構成するメタファーの構造について考察した。 また、本研究課題に密接な関連を有するテーマとして日本文学における連句を取り上げた論文では、松尾芭蕉と向井去来、野沢凡兆による歌仙「夏の月の巻」の発句から第18句までを観察し、連句の制作過程には、メタファーやメトニミーといった認知のプロセスが関与しており、これらのプロセスが連句の共同制作者の間で詩的談話が形成される際に重要な役割を果たすことを明らかにした。 上記の研究は、研究分担者との研究協力によって実現した。研究分担者は2019年度から2021年度にかけて、大学院博士前期課程の担当授業において、本研究課題と密接な関連を有する「英詩のレトリック」をテーマとし、ソネット等の英詩を精読し、音韻効果、同一語句の繰り返し、類義語による言い換え、統語構造の理解、各詩の基底をなす概念メタファーについて議論した。研究代表者も授業に参加し、本研究遂行のための様々な示唆を得た。研究分担者は今年度の論文で、Shakespeareと同時代の詞華集に見られるtimeの形容辞に着目しながら、Shakespeareにおける〈時〉の擬人化および〈時〉への呼びかけに見られるメタファーについて考察した。さらに、蕉風連句についての知見を研究代表者の研究に提供した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、昨年度に引き続き新型コロナウイルス感染状況が改善されず、英詩に関する資料収集や、メタファーデータ収集・分析の方法論について討議するための他大学訪問等、予定していた国内出張ができなかった。研究分担者が予定していた資料収集のための英国図書館への海外出張もできなかった。また、授業が遠隔体制となったためにその実施に要するエフォートが大幅に拡大したことに加え、今年度は学内運営業務に多大な時間を費やすことになり、また研究分担者も、今年度12月以降には所属大学を移るための業務に追われ、研究に充てるべき時間と労力が大幅にそがれた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度も、引き続きShakespeareの詩作品を中心に、現代にいたるまで射程を広く取り、さまざまな詩作品を対象として、メタファー成立の背景となる認知メカニズムの解明に向けて考察を深める予定である。2022年4月現在、新型コロナウイルスの感染状況は改善されず、研究代表者は昨年度に引き続きほとんどの授業をオンライン形式で実施しており、研究に支障をきたすことが懸念されるが、できる限り工夫して研究を遂行するよう努力する。研究分担者は、2022年度は所属大学が変わったため、例年行ってきた7月か9月の英国出張はできないが、これを年度末に行いたいと考えている。
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Causes of Carryover |
今年度は、新型コロナウイルス感染状況に改善が見られず、資料収集や研究方法論の討議のための他大学訪問等、予定していた国内出張および海外出張ができなかった。また、授業が遠隔体制になったためにその実施に要するエフォートが大幅に拡大したことに加え、今年度は学内運営業務に多大な時間を費やすことになり、研究に充てるべき時間と労力が大幅にそがれた。次年度には、感染状況が好転した時に、研究資料収集のための国内出張(国立国会図書館)を実施する予定である。また、研究分担者は継続中の動物名称の比喩義の研究の資料収集のため、年度末に海外出張(英国図書館)を計画している。
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Research Products
(3 results)