2019 Fiscal Year Research-status Report
ミニマリスト・プログラムにおける文生成コンピュータプログラム構築と統語理論の開発
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16K02769
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
Ginsburg Jason 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (80571778)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 マスミ 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (10209653)
寺田 寛 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (90263805)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 統語理論 / コンピュータモデル / 樹形図 / 併合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主な目的はミニマリスト・プログラムの最新の統語理論を検証するためのコンピュータプログラムを構築することであり、2018年度に引き続き2019年度も目的を達成するために研究を続けた。 2019年度は、Chomsky (2013, 2015)の提案する統語操作(集合併合と対併合)をわかりやすい形で樹形図の中にHTML形式で表示できるようにプログラムを修正した。集合併合で組み合わされた要素は同等の立場にあると考えられており、集合併合を表すため、樹形図に通常の線を利用した。しかし、対併合で2つの要素を組み合わされると、一つの要素は主要な要素と別の次元にあると考えられるため、対併合を表すには樹形図に弧線を使用した。この樹形図を描くプログラムは誰でも自由に使えるため、ウェブ上で一般公開している:http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~jginsbur/SynTrees.html 2019年度は、主に関係節と動名詞構文を中心に研究した。海外研究協力者アリゾナ大学のSandiway Fongと一緒に関係節についての論文作成を行ない、学術雑誌に投稿した。また、海外研究協力者・分担者(松本マスミと寺田寛)と動名詞構文や同族目的語を含む構文について打ち合わせを行った。動名詞構文の一部の基本的なデータをコンピュータモデルに取り入れた。 2019年度は、研究成果を公表した。5月に、東京大学で行われたEvolinguistics Workshop(進化言語学ワークショップ)で言語と併合についての発表(Sandiway Fongとマサチューセッツ工科大学のRobert Berwickと共著)を行った。また12月には、奈良女子大学で行われた日本英文学会関西支部第14回大会で動名詞構文を含む非限定構文における付票貼付(labeling)について招待発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度に、言語データの入力を学生の研究補助者に依頼する予定であったが、まだ分析できていないデータが残っていたため新しいデータ収集を断念した。 本研究課題の4年間の間にモデルのアウトプットを表示する機能の開発に予想以上の時間がかかったため、予定していた一部の種類のデータ(束縛現象を表す構文、難易構文、寄生空所構文、多重疑問詞疑問文)をモデルに取り入れることができなかった。しかし、虚辞構文、補文標識・痕跡効果を含む文 、疑問詞疑問文をモデルに取り込むことができた。中間構文の考察と分析の研究はある程度できたがモデルに取り入れることができなった。そして、動名詞構文における非定形時制をどのように付票貼付するのという興味深い面を発見したので、これを新しい研究対象とした。 生成コストの研究を当初は予定していたが、どのようにコストを計算したらよいのかという疑問に直面し断念したが、その代わり、2018年度に引き続き、どのようにモデルに自由併合操作を取り入れるかということを検討した。 本研究のコンピュータモデルのアウトプットをわかりやすい形で表示するために改良した。特に、樹形図に弧線を利用する機能を加えた。樹形図の線の間のスペースを効率よく示すことは困難で、かなり時間がかかった。 2020年の2月に、海外研究協力者Sandiway Fongを大阪教育大学へ招き、動名詞構文とコンピュータモデルによる樹形図を表示する方法について打ち合わせを行った。2020年3月に、海外研究協力者との打ち合わせのため、アメリカのアリゾナ大学へ行く予定であったが、新型コロナウィルスのため、断念することを余儀なくされた。 2019年度は、研究成果を公表することを予定していた。2つの学会発表を行うことができた。また関係節に関する論文を学術雑誌に投稿し、再度の審査のために査読者のコメントをもとに現在、書き直している。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度はこの研究計画の最終年度であったが新しく採択された研究課題で本研究の主な課題(統語理論を検証するためのコンピュータプログラムの構築)を研究し続ける予定である。 2019年度に、コンピュータモデルの樹形図を表示する機能を設けることに予想以上に時間がかかったが、多くの問題点を解決することに成功した。また、インターネットで他の学生・研究者も利用できるように一般公開することができた。 予定していた一部のデータをモデルに取り入れることができなかったが、今後、研究協力者と海外研究協力者と共同で、疑問詞疑問文、動名詞構文、同族目的語構文、関係節、そして中間構文を中心的に研究を続ける。この種の構文は実際にどのような構造を持つかということを明らかにするためにコンピュータモデルを利用する。特に、研究対象の構文における付票貼付はどのように行われるのかを明らかにすることを目標とする。また、併合は自由であるという最近の言語学の立場をモデルに取り入れて、高性能のコンピュータを利用し、併合をどのように制限すれば文を作ることが可能になるのかを調べる。 今後、海外協力研究者と本研究に関しての打ち合わせをするつもりである。打ち合わせを行うことでより効率的に、コンピュータモデルの問題点を把握・解決でき、論文作成について話し合うことができる。 今後も研究成果を公表する予定である。2020年5月の日本英語学会国際春季フォーラムで動名詞構文についてポスター発表を行う予定であったが、こちらも新型コロナウィルス感染症の流行のため、学会が中止となった。しかし、発表関連の論文を大会の論文集に執筆する予定である。また、関係節と疑問文についての2つの論文を書き直し、学術雑誌に投稿する予定である。今後、他の国際学会に応募し、論文作成を行い学術誌に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
2020年3月に、海外協力研究者と研究打ち合わせのためアメリカのアリゾナ大学へ行く予定であったが、新型コロナウィルス感染症の蔓延により、出張を中止せざるを得なかった。そのため、未使用の旅費315,490円が生じた。補助事業期間延長承認申請書を提出して、延長が承認されたので今年度に、研究の打ち合わせのため、この金額を有効に使用する予定である。
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Research Products
(7 results)