2017 Fiscal Year Research-status Report
機能的構文論による英語諸構文のより良き説明を求めて
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16K02777
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
高見 健一 学習院大学, 文学部, 教授 (70154903)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 機能的構文論 / 形式と意味 / 形容詞 / 比較表現 / 描写述語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、平成28年度から平成32年度にわたる5年間で、多くの英語構文の適格性は、単に統語的要因にのみ左右されているのではなく、意味的、談話的、語用論的要因にも大きな影響を受けていることを示し、「機能的構文論」(Functional Syntax)による英語諸構文のより良き説明を求めるものである。研究2年目の平成29年度は、これまでの研究の成果として、Susumu Kuno 氏との共著 "Functional Syntax" の論文が、Masayoshi Shibatani et al. (eds.) (2017) The Handbook of Japanese Syntax, Mouton de Gruyter, pp. 187-234. に、単著の "Quantifier Float in Japanese and English" の論文が、Taro Kageyama and Prashant Pardeshi (eds.) (2018) Handbook of Japanese Contrastive Linguistics, Mouton de Gruyter, pp. 453-475. に掲載されて発行となった。 また、英語の形容詞に関する様々な構文に関して機能的分析を進め、『謎解きの英文法 形容詞』をくろしお出版から発行すべく、原稿を完成させた。12章から成る本書は、形容詞の限定用法と叙述用法、比較表現、前提などの様々な観点から、これまでに明らかにされてこなかった点を明示的に示し、大きな成果を上げたと考えられる。本書は、今年度(平成30年)に刊行の予定である。 さらに社会的貢献として平成29年度は、機能的構文論の立場から英文法を平易に解説し、Asahi Weekly(朝日新聞社)のコラムに一年間、「英語のふ・し・ぎ」として26回執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
5年間の本研究で考察を予定している英語の諸構文の分析をこれまでの2年間でかなり多く取り上げることができ、それらの構文の適格性と不適格性を左右している要因を突き止めることができたので、大きな進展が見られたと思われる。そして、これらの構文の適格性が、純粋な統語的要因ではなく、意味的、機能的、談話的要因、さらに文脈や話し手・聞き手の想定などにも依存していることを明らかにした。また、研究成果を著書や論文の形で発表できたので、意義深い進展があると思われる。 このような進展が可能となったのは、共同研究者のハーバード大学名誉教授、久野暲氏との頻繁な議論、論文の執筆を重ねたことなどが大きな理由であるが、合わせて、英語母語話者の Karen Courtenay 氏、Nan Decker 氏(ともに言語学 Ph.D.)の絶大な協力をあおげたことも重要な理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度(平成30年度)は、5年間にわたる本研究の3年目であり、中間地点に当たる。動詞や形容詞を中心に考察したこれまでの諸構文から議論をさらに広げ、今年度は、英語の代名詞・再帰代名詞とそれらの先行詞の間にどのような制約が課されているかを中心に研究を進める予定である。これまでの生成文法による研究で、代名詞・再帰代名詞とそれらの先行詞の間に存在する統語的規則は、かなりの程度明らかになっているものの、それらの中には不十分なものも多く、意味的、談話的要因も大きく関与することが分かっている。このような視点に立って、例文を多く集め、これまでの機能的構文論による分析を精査し、母語話者の適格性判断も考慮に入れながら、入念な研究を進めたい。
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