2016 Fiscal Year Research-status Report
投射構文の歴史的発達と構文化について-英語史からの実証研究-
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16K02781
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
柴崎 礼士郎 明治大学, 総合数理学部, 専任准教授 (50412854)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 歴史言語学 / 構文 / 構文化 / 文法化 / 英語史 / 対照言語学 / 談話分析 / 語用論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度には今後本格的に開始される研究の土台を築いた。 まず、研究目的遂行上、以下のような3つのデータベース利用の準備を行った。一点目は、サンティアゴ・デ・コンポステーラ大学(スペイン)のTeresa Fanego教授を中心として編纂されたCOLMOBAENG (1700-1879)コーパスである。同教授の研究チームから使用許可を得て、取り分け18世紀のアメリカ英語の調査に最善の準備ができた。二点目は、研究代表者の本務校(明治大学)の所有データベースを精査して有効活用できる準備を整えた。具体的には、ECCOおよびEEBOを用いることで、15世紀後半から18世紀までの文献資料が検索可能となり、HCPPにより1660年から1834年までの英国議会資料をデータベースとして使用することが可能となった。三点目は、日本語との対照研究遂行のためにJapanKnowledge Libの使用方法を確認した点である。これらのデータベースを活用することにより、研究の質量がともに向上可能と判断している。 研究成果刊行も国内外での研究発表も順調である(一部は以下で紹介する)。また、過去の科研費成果物が学界で認知されたことにより、執筆依頼および研究発表依頼を数件ずつ受けたことからも、研究発信面での効果の程が窺えた。 翻訳依頼を受けた点も加筆しておく。一つは、スタンフォード大学名誉教授Elizabeth C. Traugott氏の論文翻訳であり、既に書籍の一部として刊行済である。もう一つは、ニューメキシコ大学名誉教授Joan Bybee氏の最新の著作Language Change (Cambridge UP, 2015)の翻訳である。現在、小川芳樹氏(東北大学)と柴﨑の2名を編者として翻訳チームを作り、2年後を目途に完訳と刊行を目指している。 研究の準備および成果の両面で順調と判断している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度は、研究計画書に記したようにデータベースの精査と使用に着手したことにより、研究面でも一定の成果を得ることができた。加えて、所属大学に於いて「明治国際シンポジウム2017」を開催できたことで、以下の利点が得られた。一点目は、研究最終年度へ向けた成果刊行の方向性を早い段階で確認できた点である。二点目は、本申請課題の研究領域が、研究グループ内で想定していた以上に領域横断的であると気付けた点である。例えば、参加者は大学教員や大学院生だけではなく、中学高校教員も含まれていた点が挙げられる。三点目は、本国際シンポジウムを開催したことにより、更なる国際シンポジウム開催の準備と実施へ効果的に至ったことである(下記「今後の研究の推進方策」を参照)。 全体の進捗状況だけから判断すると順風満帆に見えるが、「おおむね順調に進展している」とした理由は以下の通りである。研究協力者の一人Alexander Haselow氏(独ロストック大学)が体調不良であったため、上掲の「明治国際シンポジウム2017」、および、本年度7月に実施される国際語用論学会での研究パネル発表への参加が困難となったことである。一方で、Haselow氏との研究上の交流に変化は無く、体調が回復し次第、共同研究への再参加は確認できている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画2年目の予定は以下の通りである。まず、研究成果発表の面では、以下のパネル発表とシンポジウムを中心として計画が遂行される。一つは、2017年7月にアイルランド共和国ダブリン市で開催予定の「国際語用論学会(IPrA2017)」にて採択された研究発表パネルである。本パネルの座長は、本申請課題の研究協力者である東泉裕子氏(東京学芸大学)と研究代表者(柴﨑)、および、小野寺典子氏(青山学院大学)の3名である。もう一人の研究協力者である大橋浩氏(九州大学)もパネリストとして参加が決定している。もう一つは、2017年11月に東北大学で開催される「日本英語学会第 35 回大会」にて採択決定済のシンポジウムである。本シンポジウムは英語史における定型性に取り組み、研究代表者(柴﨑)は英語定型表現の通史的取り組みと通言語的研究上の意義を説明し、特に初期近代英語から現代英語に掛けて定型性が変化している事例を紹介する予定である。 研究成果刊行の面では、以下のような取り組みを計画している。国内での研究論文刊行では、執筆依頼を受けている構文化および歴史語用論関連のものを予定通り成果刊行することである。うち2件は既に論文として提出しており、今年度中には校正を経て刊行が予定されている。もう1件は本年度末の提出に向けて準備を進めている。海外での研究論文刊行については、以下の2件を中心に執筆を進めている。一つは、昨年4月に参加した国際ワークショップ(Gramm2, France)の論文集への寄稿論文であり、既に提出済であることから今後校正に入る予定である。もう一つは、昨年9月に参加した国際ワークショップ(ISLE-4, Poland)の論文集が準備されており、2017年9月末日の締切に向けて執筆を進めているものである。 既に「研究実績の概要」欄でも記した通り、研究書の翻訳にも取り組んでいる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が一部生じた理由は以下の通りである。「今後の推進方策」欄で記したように、本研究チームは「国際語用論学会(IPrA2017, アイルランド)」に於いて研究発表パネルを主催する。当初の案では、本申請課題の研究協力者であるAlexander Haselow氏(独ロストック大学)を招聘する予定であったが先述した理由のため不参加となった。そこで、青山学院大学名誉教授秋元実治氏を招聘することが決まり、そのための旅費として研究費の一部を繰り越しとしたためである。ドイツとアイルランドの往復旅費に比べ、日本とアイルランドの往復旅費は負担が大きいため、研究費使用を一部変更せざるを得ない結果となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上述の理由により研究費使用に一部変更が生じたが、その他の箇所に大きな変更は無い。当初の申請書通りの研究計画遂行になるものと思われる。
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