2017 Fiscal Year Research-status Report
tough構文の統語構造の歴史的発達に関する実証的研究
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16K02783
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
中川 直志 中京大学, 国際英語学部, 教授 (70321015)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | tough構文 / 不定詞 / vP / 受動構文 / 英語学 / 言語学 / 歴史言語学 / 生成文法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度においては、研究計画にしたがい、tough構文の歴史的発達のメカニズムについて研究を行った。現代英語の tough 節においては、一般にbe 動詞に導かれる受動構文が現れることができないとされるが、getあるいはbecome に導かれる受動構文では容認性が向上する。また、現代英語では許されない be 動詞に導かれる受動構文が、1400 年代前後を中心に tough 節において生起可能であったということも観察されている。これらの事実は、受動構文における be の範疇が、本動詞から助動詞へと通時的に変化したことを示唆しており、tough 節において助動詞が生起し得るような機能範疇が発達しなかったという分析と符合する。つまり、tough節は助動詞が現れ得るような機能範疇を発達させて来なかったため、beが本動詞の位置に具現できる間はtough節に受動不定詞が現れる可能性もあるが、beが助動詞として確立されると、それが位置すべき機能範疇を持たないtough節に受動不定詞が現れる可能性は消滅する。このように考えると、tough節に受動不定詞が現れなくなった時期とbeが助動詞として確立する時期がおよそ重複することを、tough節をvPと分析することによって説明することが可能となる。本年度は、この分析についてされなる根拠を追究するとともに、現代英語におけるtough構文の振る舞いとの整合性についても調査した。本研究の分析が正しいとすると、tough構文の派生においては主節主語とtough節内の空所が直接的に関連付けられる可能性が生まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
若干研究計画通りに進んでいない部分もあるものの、当初の仮説について、およそ期待する結果が得られていると考えている。電子コーパスを使用した調査等、本年度の進捗に照らして、その内容について若干の見直しも行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請書に記載した「研究実施計画」を基本的に維持しつつ、本年度の研究成果に鑑み、適宜計画の内容を微調整していきたい。 具体的には、tough構文における不定詞節がvP以上に発達しなかったという分析について、通時的側面と共時的側面からさらなる論拠を発掘するととともに、この分析の理論的研究における位置づけについても考察したい。
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Causes of Carryover |
当初計画していた海外での資料収集や学会参加が日程の都合がつかなかったこと、また、年度内に到着予定であった洋書の刊行が遅れたりしたことが、主な理由である。平成30年度においては、当初より計画していた図書費や旅費、さらに、追加のPC等を含めた研究遂行のための機器の購入を予定している。
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