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2018 Fiscal Year Research-status Report

古英語・中英語における目的語移動の可能性と左周辺部構造に関する研究

Research Project

Project/Area Number 16K02784
Research InstitutionChubu University

Principal Investigator

柳 朋宏  中部大学, 人文学部, 教授 (70340205)

Project Period (FY) 2016-04-01 – 2020-03-31
Keywords目的語移動 / 否定目的語 / 数量化目的語 / 否定呼応
Outline of Annual Research Achievements

古英語の非西サクソン方言に特有の否定的不定辞である naenig 'not-any' に関して、その分布を調査し、古英語の方言間にみられる否定文における語彙動詞と目的語の相対語順の違いについて論じた。調査対象を対格目的語のみに限定し、歴史コーパスであるYCOEから収集した用例に基づき、否定的不定辞 naenig 'not-any' は、Ingham (2006)、 Mitchell (1985)などで指摘されているように、非西サクソン方言でよく使用されていることを計量的に示した。
また、YCOEを用いたコーパス調査の結果から、否定辞 ne 'not' の有無が語彙動詞と目的語の相対語順に大きく影響することを主張した。語彙動詞と目的語の語順に関して、nan 'no' を含む否定目的語の場合には「目的語-動詞」語順がほぼ義務的であるが、肯定目的語の場合には「目的語-動詞」語順と「動詞-目的語」語順の間にあまり差はないことが示されている(Pintzuk and Taylor (2006))。これに対して naenig 'not-any' を含む目的語は異なる分布を示した。つまり、目的語が否定的不定辞 naenig 'not-any' を伴っていても、否定辞 ne 'not' を含む文では、「目的語-動詞」語順が義務的であったが、否定辞 ne 'not' あるいは ne 'not' の動詞縮約形を含む文では、Pintzuk and Taylor (2006)で示された数量化目的語の分布に近く、「目的語-動詞」と「動詞-目的語」の両方の語順がほぼ同程度の割合で観察された。一方、否定辞 ne 'not' が用いられない場合、否定的不定辞を含む目的語は語彙動詞に後続する語順が義務的であった。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

当初は「主節・従属節」「従属節の節タイプ」に基づき、言語事実を整理・分類し、生成文法に基づいた分析を行う予定であった。実際、従属節における目的語移動の可能性は、節の種類に大きく依存していると予測され、「中核的副詞節」と「周辺的副詞節」との違いにより目的語移動の可能性に違いがあることはすでに指摘されている。しかしながら、今回調査対象とした「否定呼応構文」と「否定辞を伴わない否定文」はともに極性は否定であり、極性によって両者を区別することはできない。そこで2種類の否定的不定辞 naenig 'not-any' が存在したと分析したが、否定要素としての不定辞と数量詞的不定辞とを区別する統語的特性を示す言語事実をまだ十分に収集できておらず、本研究課題の進捗が遅れ気味となっている。
また古英語において、否定的不定辞 naenig 'not-any' は使用されている作品が限られ、また時代区分においても後期古英語では使用頻度が減少し、初期中英語ではほとんど使用されていない。今回の調査においても中英語のコーパスPPCME2ではわずか数例のみ観察されただけである。そのため、否定的不定辞の歴史的変化と他の否定的不定辞である nan 'no' との競合・移行に関して、まだ妥当な分析が行えていない。

Strategy for Future Research Activity

否定的不定辞 naenig 'not-any' を含む否定目的語は、否定呼応構文においては数量化目的語に類似した分布を示す一方、文否定の否定辞 ne 'not' をともなわない文では否定辞 nan 'no' を含む否定目的語と同様の分布を示すことを論じた。今後は数量化目的語と否定的不定辞 nan 'no' を含む否定目的語の分布を調査し、それぞれの統語的振る舞いと否定的不定辞 naenig 'not-any' を含む否定目的語の統語的振る舞いを比較し、2種類の否定的不定辞 naenig 'not-any' の統語的特性を明らかにする。
また、初期中英語における否定的不定辞 nany 'not-any' の使用に関して、PPCME2以外のコーパスも利用し、用例を収集し、その統語的特性について論じる。語彙的にも方言的にも有標な表現であるため、決定的な結論を導くことは困難であるかもしれないが、関連する言語現象を詳細に分析し、否定的不定辞 nany の衰退と否定的不定辞 nan の広まりについて論じる予定である。
このようにして得られた研究成果の一部は、英語史あるいは歴史言語学関係の国際学会で発表する予定である。

Causes of Carryover

当初購入を予定していた英語史関連書籍の出版が翌年に繰り越されたため、購入に必要な予算を繰越すこととした。また、研究成果を発表するのに適した国際学会が次年度に開催されるため、その旅費として同じく繰越すこととした。

上記のとおり、英語史関連書籍の購入と国際学会での研究発表のための旅費に使用する。また、諸言語統語論関係の書籍も頻繁に出版されているため、その種の書籍購入にも使用する予定である。

  • Research Products

    (4 results)

All 2018

All Journal Article (1 results) Presentation (3 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results)

  • [Journal Article] 言語接触と言語変化:現代の英語に残る他言語の面影2018

    • Author(s)
      柳 朋宏
    • Journal Title

      GLOCAL

      Volume: 14 Pages: 2-3

  • [Presentation] 古・中英語のfor/because節における目的語の生起位置について2018

    • Author(s)
      柳 朋宏
    • Organizer
      名古屋大学英文学会第57会大会シンポジウム『英語史における名詞・代名詞の実証的・理論的考察』
  • [Presentation] A Diachronic Analysis of the Distribution of the Distributive Quantifier each2018

    • Author(s)
      YANAGI Tomohiro
    • Organizer
      The 39th Annual Conference of the International Computer Archive for Modern and Medieval English
    • Int'l Joint Research
  • [Presentation] On the Demise of Two Types of Nonstructural Case in the History of English2018

    • Author(s)
      YANAGI Tomohiro
    • Organizer
      The 20th International Conference on English Historical Linguistics
    • Int'l Joint Research

URL: 

Published: 2019-12-27  

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