2016 Fiscal Year Research-status Report
対話の文体分析と英米演劇テクストの精緻化コーパスの作成
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16K02789
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Research Institution | Kyoto Seibo College |
Principal Investigator |
能勢 卓 京都聖母女学院短期大学, 児童教育学科, 准教授 (70626837)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | セリフの文体分析 / コーパス言語学 / 英米演劇 / 電子化テクストの作成 / 談話情報付加コーパス / 意味情報付加コーパス / マニュスクリプト研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
コミュニケーションにおける発話者のメッセージの効果的伝達に関する文体研究は、有効且つ重要な研究であると考え、本研究において次の二点を中心に研究を行う予定である。[1]これまでの英米演劇作品の文体研究において作成したEugene O’Neillの50作品[約107万語]のコーパスに談話情報と意味情報を付加した精緻化コーパスを作成し、その上で英米演劇テクストのコーパスを用いた台詞の文体研究を発展させていく[なお比較を行うために同時期の劇作家の演劇作品のコーパスの作成も行う]。[2]コーパスを用いた多角的文体分析に加えて、劇作家のアイデアノートやマニュスクリプトを調査・分析することを通して、創作過程において台詞に施された言語的工夫のプロセスの検証から、演劇作品の台詞における効果的言語化の一端を明らかにしていく。 平成28年度の研究実績においては次の3つの点を中心に取り組んだ: [1] O’Neillの全作品のテクストの電子化作業を完了を目指しつつ、それと同時に談話情報付加作業ようのテクストの作成を行った。O’Neill作品の電子化については一幕劇以外の作品は全て電子化を完了させ、それらに関しては談話情報付加作業ようのテクストの作成もほぼ完了した。 [2] O’Neill作品の談話情報付加作業ようのテクストに記されている台詞を読み、Speaker-Hearerごとにそれぞれの社会的地位、両者の関係性などの談話情報をテクストに記入する作業を行った。 [3] Somerset MaughamとThornton Wilderの演劇作品のテクストを電子化に関しては、両作家の作品の電子化テクストを作成し、目視確認により間違いをチェックして修正する作業を行った。 上記のテクストから得られる語彙情報をもとにコーパス言語学的アプローチにより、セリフの文体的特徴について検証を進めていっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年の4月から6月にかけて執行出来る予算が無く、その結果Eugene O’Neillの電子化テクストのチェック作業やチェックが完了したテクストの整理、また談話情報付加作業ようのテクストの作成の開始が夏休みまで行うことが出来ずにいた。その後アシスタントなどの協力を得て、まずはO’Neill作品のテクストのチェック作業の完了を目指しつつ、談話情報付加作業ようのテクストの作成行った。 O’Neill作品の多幕劇に関しては全て電子化テクストと談話情報付加作業ようのテクストの作成が完了したのは大きな研究活動において重要な進展であったと考えらる。そして10作品ほどに談話情報の付加作業を行った。この談話情報の付加作業は、各作品の談話情報付加作業ようのテクストの各セリフにSpeakerとHearerの社会的地位や両者の関係性を記入していくという作業であり、予想外に時間の要する作業である。しかしこれらの談話情報を目視で確認・記述していった上で、今後Oxygenを用いて各作品のそれぞれの台詞に談話情報をタグ付けしていくことにより、精緻化されたコーパスの作成を進めていく予定である。 またO’Neill作品の台詞の文体を比較検証するために同時期の劇作家であるMaughamとWilderの作品についても電子化テクストを作成し、それら電子化テクストを目視で全ての英文を確認し、間違いのチェックとエラーの修正作業を行っていった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に行ってきたO’Neill作品の全作品の電子化テクストの作成を完了し、その上でO’Neill作品の談話情報付加作業ようのテクストも全て作成する。そしてこのO’Neillの全作品の談話情報付加作業ようのテクストに談話情報の付加作業を進めていく予定である。談話情報の付加作業においては、まずは各作品を印刷し、それぞれの作品の全ての作品を読んで、それぞれの台詞にSpeakerとHearerの社会的地位や両者の関係性を記入していく。この談話情報が記入されたテクストを確認しながら、Oxygenを用いて談話情報をテクストにタグ付けしていく予定である。この談話情報がタグ付けされたコーパスを用いることで、話者ごと聞き手ごとの語彙情報や、それぞれの社会的地位ごとの語彙情報や、話者-聞き手間の関係性ごとの語彙情報を抽出することができることで、更なる台詞の文体分析や発話者ごとの台詞の言語的特徴の分析を行うことが可能となると考えられる。 また平成28年度より作成してきたMaughamとWilderの電子化テクストの作成を完了させ、それらのテクストにも談話情報を付加した精緻化コーパスの作成を開始する予定である。 そしてマニュスクリプト研究に関しては、イェール大学バイネキ稀覯本図書館などに所蔵されているO'Neillの中期の演劇作品のアイデア・ノートや演劇作品の草稿を分析・検証するために、イェール大学バイネキ稀覯本図書館に研究調査の実施を了承してもらえるように先方に交渉を行う予定である。
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Research Products
(1 results)