2018 Fiscal Year Annual Research Report
Interlanguage Pragmatics in Japanese during Study Abroad
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16K02798
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
ボイクマン 総子 (椙本総子) 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (50370995)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 中間言語語用論 / 第二言語習得 / 断り / 語用論的能力 / 留学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、第二言語環境との比較のため、来日直後(外国語環境)の学習者データを分析した。その際、次の4つの関係―疎で上下・親で上下・疎で対等・親で対等―について、負担の度合いの異なる12種の断りの学習者45名のデータを日本語母語話者(NS)62名のデータと比較した。 具体的には、初級後半19名、中級13名、上級13名にわけ、断りの主要部の不可と理由に焦点をあて、①不可と理由の展開パターン、②ヘッジ、③理由の言語形式を分析した。 結果、①については、 (1) NSに最も多い「理由→不可」パターンはレベルが上がるにつれ多くなる。(2)「不可のみ」のパターンは、初→NS→中→上級の順に少なくなる。②について、(3)日本語レベルが低いとヘッジなしで不可が表現されることが多いがレベルが上がるに従いヘッジの数と種類が多くなる。(4)ヘッジの出現にはレベルに応じた順序がある。(5)NSは使用するが上級になっても使用されないヘッジがある。③については、(6)レベルが上がるにつれノデとテの使用が増え、逆にヘッジなしは減る。一方、カラは中級にかけて上昇し上級で減る。(7)NSに比べ、ヘッジなしが上級においても多い。 (8) カラとノデの相手に対する使い分けは上級でも行われていない、ことがわかった。 当該の言語行動の目的である「断り」を効果的に達成することと相手との関係を良好に保つという2つの指向性のうち、前者は初級段階から達成されていることが主要部のパターンとヘッジの出現傾向からわかった。一方、後者の指向性は言語能力が発達するにつれ徐々に習得される。ただし、能力が高くても使用されないヘッジがあることやノデとカラの使い分けが行われていない等、外国語環境だけでは習得が難しい項目があることがわかった。
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