2016 Fiscal Year Research-status Report
日本語学習者の自他動詞使用における認知と言語化の関連性:視線分析を用いた比較研究
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16K02808
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
吉成 祐子 岐阜大学, 留学生センター, 准教授 (00503898)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 自他動詞 / 視線分析 / 多言語比較 / 日本語教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、言語によって表現方法に特徴があり、日本語学習者の誤用が多く見られる「自他動詞構文」を取り上げ、学習者特有の表現の特徴や誤用の要因を明らかにすることを目的としている。従来、誤用には母語の影響(言語転移)や学習者に共通する言語的特徴(中間言語)があると指摘されてきたが、より厳密に解明するため、複数の母語(英語、中国語、ロシア語、ハンガリー語、イタリア語)の学習者グループの言語表現(各母語と学習言語である日本語)と日本語母語話者の表現との比較分析を試みる。分析には、各言語における自他動詞構文の特徴を記述、発話場面によって異なる自他動詞選択の傾向を質問紙調査等で検証、自他動詞選択における事態認知傾向を視線分析装置で分析、という3つの手法を用いる。 本年度は、①日本語学習者の自他動詞構文における誤用の実態を明らかにするための方法を検討、そして、②母語の影響を検証するための基礎データとなる、各言語の自他動詞構文の言語的特徴をまとめる作業が中心となった。①については予備調査として母語が異なる日本語学習者を対象とした文法テストを実施し、その際、認知傾向を調べるために視線分析実験も同時に行った。②については、様々な言語を取り扱う上で分析方法のモデルパターンを決定するほうがよいと考え、対象言語の一つであるハンガリー語について、自他動詞構文の言語的特徴の記述やハンガリー語を母語とする日本語学習者を対象とした予備調査を行った。来年度以降の本実験の実施に向けた、基礎となるデータが収集できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度となる平成28年度は、本実験の準備期間として位置づけられており、各言語の自他動詞構文についての記述、実験内容の検討、分析・検証方法の確立を目指した。実際には対象言語の一つであるハンガリー語に焦点をあて、研究協力者と連携し、ハンガリー語の自他動詞構文の特徴をまとめ、記述方法のパターンを検討した。研究協力者との連携は日本や現地でのミーティングだけでなくスカイプ等の通信手段も利用して議論を重ねることができた。また実験内容検討の一環として、学習者の自他動詞構文に対する認知傾向を探る予備調査を行った。自他動詞の形式や、格助詞との組み合わせに注目したもので、現在、データ分析に取り掛かっている。さらに、質問紙調査による語用論的側面からの比較調査を行うことも決定し、予備調査も行えたことから、実験内容だけでなく実施のために必要な作業等も精査することができた。自他動詞構文ではないが、対象としている言語に関する研究の公表として、国内外での学会発表、論文の公刊という形で成果を残すことができた。 本年度は本実験に向けたパイロットスタディである実験・調査を行い、データを収集することができたことからも、おおむね順調に進展していると言えるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、各言語グループに対して本実験を実施し、データ収集に努めることが活動の中心となる。そのためにも一層、各言語を担当している研究協力者と密に連絡を取り合い、実験参加者の確保や、現地に赴くための日程調整など、計画を万全のものとする。また、視線分析の研究は、国内よりも海外で、そして言語学分野よりも情報・工学・心理学といった分野で盛んに行われているため、今後の成果発表も視野にいれ、関連学会へも積極的に参加する。 年度前半は、予備調査として収集したデータの分析を行い、内容を精査する。そして、本実験における実験刺激の選定や実験プログラムを確定する。同時に、各言語の自他動詞構文についての記述を複数言語間の比較を主眼としてまとめ、発表の準備をする。 年度後半は言語グループ毎にデータを収集する。各言語担当の研究協力者と連携し、実験準備や実施に努めたい。
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