2016 Fiscal Year Research-status Report
ことば行為についての対話論的対照研究―対面的相互行為におけることばの日英比較
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16K02811
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西口 光一 大阪大学, 国際教育交流センター, 教授 (50263330)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 対話原理 / 関連性理論 / 発話 / 対照研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の計画通り当面の研究資料として『You've Got Mail』(1998年、ワーナーブラザーズ)を採用した。オリジナルの英語セリフをすべて確認したのち、日本語吹き替えをすべて書き起こしした基礎資料を作成した。同資料について対話論的対照研究としてふさわしいカテゴリーとして終助詞及びそれに相当する要素に当面注目することとした。そして、そうした研究の第一段階として、日本語セリフで「ね」「よ」「よね」を文末に含む発話契機を抽出した。その結果、メールを読み上げている部分を除く対面的相互行為の発話全1085ターンの中で、「ね」が69例、「よ」が205例、「よね」が9例、計294例の発話契機が得られた。このうち、「ね」については、「~からね」「~てね」のように後ろが略されていると見られる例が22例含まれている。言うまでもなく、これらの発話契機において英語セリフでは、終助詞がない。日英のセリフの間でのこの「終助詞あり/なし」(終助詞のような要素が利用可能か否か)の違いは日英の発話構築の最も基本的な一般特性であると見ることができる。本研究プロジェクトの第一段階としては、こうした日英の発話の基本的一般特性が、特定の活動の脈絡で行われる相互行為の特定の契機に行われるという意味で「同じ(と見なされる)」発話の構成にどのような影響を及ぼしているかを考察する。また、発話にかぶさるイントネーションの行使についても考察する予定である。現在のところは、(1)林(1960・2013)が論じているように日本語発話の結び文型は基本として4つの層をなしているのに対して、英語発話ではそのような層構造は明瞭には観察されない、(2)そのように「層に分けて発話を構成する」という日本語発話の一般特性が発話の構成に大きく影響している、ことが明らかになるものと予想している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対話原理に基づく対照研究というのはこれまでにない視点であり、そうした発話の理論を基盤として実際の発話を研究するというのはまったく新しい試みであるが、研究プロジェクトは着実かつ順調に進捗している。林(1960/2013)の日本語の文型の研究に至ることができたことは大きな成果であった。林の文型の研究は、文の構成と発話の構成を架橋する重要な研究である。
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Strategy for Future Research Activity |
上で言及したように、林(1960/2013)の日本語の文型の研究に至ることができたことは大きな成果であった。今後は、引き続き実証的な研究を続けると共に、林の研究が文の研究と発話の研究の間でどのような位置を占めるものなのかを解明する理論的研究も推進する。
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Causes of Carryover |
所要経費執行後のわずかの残なので、そのまま翌年度に翌年度分と合わせて執行する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
所要経費執行後のわずかの残なので、そのまま翌年度に翌年度分と合わせて執行する。
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