2018 Fiscal Year Research-status Report
ことば行為についての対話論的対照研究―対面的相互行為におけることばの日英比較
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16K02811
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西口 光一 大阪大学, 国際教育交流センター, 教授 (50263330)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 対話原理 / 終助詞 / 発話 / 対照研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
2つの観点で2言語でセリフがある映画資料を検討した。一つは、日本語階層文法で言う伝達の部分に注目した検討で、資料の中にある873の平叙文の英語発話について対応する日本語発話の発話末を観察した。その結果、その52.5%において英語発話では観察されない終助詞等の言語要素が観察された。終助詞の他に「~でしょ」「~だろ」「~し」「~って」などさまざまな表現が観察された。もう一つの観点は、一つ目の観点に関連するが、終助詞の「ね」「よ」「よね」に絞って対応する英語発話との対照的な分析を行った。その結果、ほぼ「ね」に対応する付加疑問を除いて英語にはこうした終助詞に対応する言語要素がないことが確認され、さらに、(1)「ね」の場合には法助動詞や「well」などが、そして「よ」では「Listen!」や「Guys!」や「I think」が現われる傾向、(2)英語では平叙文で言われているところが日本語ではしばしば「~のでね」「~からね」「~しね」として現われる傾向、(3)依頼の発話で「~よ」がひじょうに頻繁に現われる傾向、などが観察された。こうした観察の結果、(a)各言語には独自の発話構築の方略があること、(b)終助詞は日本語の場合に特徴的な発話構築の方略で、英語ではそれに対応する方略は主として発話のイントネーション(バフチン 2002)となるが、付加疑問や「well」や呼びかけの言葉なども時に行使されること、が明らかになった。 以上の研究結果について、第5回カーディフ大学応用言語学研究大会(5th Cardiff Symposium of Applied Linguistics and Japanese Language Pedagogy)で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のように現在のところまではおおむね順調に進んでいるが、現在の分析の視座はモノロジズムを脱していない。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の主眼は対話論の視座からの研究なので、同視座からの新たな見方の提示が今後の大きな研究的な挑戦となる。これまでの日本語階層文法の観点をきっかけとしながら、英語の場合とは異なる新規の日本語発話構成のモデルの提案が必要となる。データの観察に基づきながらも、文法研究と対話理論を往還する理論的研究が最終年度の研究課題となる。
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Causes of Carryover |
1冊の書籍の納入が遅れたため、その分の3195円の残額が発生した。
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