2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K02820
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Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
河先 俊子 国士舘大学, 21世紀アジア学部, 教授 (60386927)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ベトナム難民第2世代 / 多文化共生 / 外国につながる高校生 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)ベトナム難民第2世代を対象としたインタビュー調査:ベトナム難民第2世代8名に対するインタビュー調査を実施し、データをインタビューの社会的相互行為としての側面、つまり、インタビュアーが協力者を日本人と異なるゆえに統合になんらかの問題を抱えているマイノリティーとして位置づけて行ったインタビューであることに留意して分析した。インタビューで協力者は主に「ベトナム人としての自分」「異質性を帯びた自分」として日本社会への違和感や差別的な対応を受けた経験を語った。このことから、異質ゆえに問題があるベトナム難民第2世代という存在は、そのように位置づける日本人のまなざしや態度、行為によって形成される側面があると考えられる。しかし、インタビューでは「独立した強い自分」や「日本人と同じ自分」として日本人と同等な信頼、権利を求めていること、そのための便宜的な帰化も語られた。また、ベトナムの伝統的な家庭規範から距離を置いていることが語られる場合もあった。これらは、ベトナム人性を保持しつつも、日本の言語、習慣、価値観を習得し、両側面を利用して生きる第2世代の姿を現していると考えられる。さらに、来日時の年齢、ベトナム語の保持、政治的思想が語りを分岐させる可能性も示唆された。 (2)定時制高校の多文化共生部への参与観察:外国にルーツを持つ学生が多く参加する多文化共生部で参与観察を行い、録画データを収集した。多文化共生部では、教師の指示のもと文化祭の準備などを行うが、参加の形態は自由で、教師が学生の態度や言動を咎めたり、評価したりすることがない。また、学生のルーツに関わることやダンスの発表などの自己表現は奨励されている。このような特徴が、学生たちの積極的な自己呈示や関係づくりを促していると考えられる。録画データは編集し、多文化共生部を紹介する素材として活用している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
データ収集上、以下の大きな問題をかかえている。 (1)インタビュー協力者の募集が難航しており、予定人数20人を大幅に下回る9人にしかインタビューを実施できていない。 (2)ベトナム難民第2世代が活躍する場のひとつとして定時制高校の多文化共生部で参与観察を行ってきたが、近年、学生の質が変わったということで、母語別にグループが形成されて母語で会話する場面は多くみられる一方で、学生全体で一つの話題について話す場面はなかった。したがって、予定していた人間関係構築のための日本語の機能、使われ方の特徴を分析できるようなデータは収集できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)ベトナム難民第2世代の募集が難航している、(2)定時制高校で学生間の日本語による会話場面が少ないというデータ収集上の問題に対処するために以下のように方針を転換して研究を進めていく。 (1)ベトナム難民第2世代だけでなく、移民第2世代にも対象を広げて協力者を募り、インタビュー調査を実施する。そして、これまでのデータの分析から得られている仮説(①日本人によるまなざし、態度、行為によって否定的ニュアンスを帯びた異質な存在としての自己が形成される、②伝統的な家族規範からの離脱、③母語の保持、政治的思想がライフヒストリーを分岐させる)が移民第2世代にも当てはまるかどうかを中心として分析を行う。また、ベトナム難民第2世代との共通点と相違点を考察する。 (2)定時制高校で外国につながる学生のクラスを担当している教員に対して、学生とどのように関係を築いているかインタビュー調査を行う。また、教員と学生間の日本語による会話のデータをできるだけ収集し、日本語の機能に焦点を当てて分析を行う。ベトナム難民第2世代をはじめ移民第2世代が多く働く職場を訪問して、社員にインタビューを行い、社員間の関係を調査する。 (3)(1)、(2)の結果に基づいて、ベトナム難民第2世代を中心とする移民第2世代の社会統合について総合的に考察する。
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Causes of Carryover |
インタビュー協力者の募集が難航しているため、旅費、人件費・謝金の残高が多い。今年度はインタビュー対象者をベトナム難民第2世代から移民第2世代へと拡大し、インタビューのための旅費、謝金として使用したい。また、旅費は、研究会への参加のためにも使用する予定である。
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Research Products
(2 results)