2017 Fiscal Year Research-status Report
意見文の談話展開と表現技法の特徴についての日中対照研究
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16K02822
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
大野 早苗 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 先任准教授 (40364955)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
莊 嚴 秀明大学, 観光ビジネス学部, 准教授 (70348415)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 意見文 / 日中対照 / 国語教育 / 日本語教育 / 課程標準 / 学習指導要領 / 説得のためのパラグラフ構成 / 構成要素の配列 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年秋までに収集した日中の大学生の意見文の分析を進め、分析結果の一部をまとめて、アカデミック・ジャパニーズ・グループ研究会(2018年2月、於 東京海洋大学)において「母語による意見文の日中比較―パラグラフ構成を中心に―」と題してポスター発表を行った。発表は、日中の大学生が文章に説得力を持たせるために何をどのように書けばよいと考えているかにポイントを絞ったものである。発表では、パラグラフの構成に注目し、展開部がどのように中心文と関わるかを分析した結果、日本の大学生は社会一般に見られる事例や個人的体験を述べて中心文の記述を一般化しようとする傾向があり、中国の大学生は故事や名句の引用による権威づけや叙情的描写による感情への訴えかけにより中心文の記述を強化しようとする傾向があることを指摘した。 さらに、テーマの説明、論拠、意見の表明、予想される反論といった構成要素の配列、および各構成要素に含まれるパラグラフ数について日中対照研究を行った結果、日本人学生は主張を論拠より先に示す傾向があり、論拠を2パラグラフ程度で述べること、それに対して、中国人学生は論拠を主張より先に示す傾向があり、論拠を3~4パラグラフで述べることがわかっている。この結果は、2018年8月に開催予定の日本語教育国際研究大会(於 カ・フォスカリ大学)において「日本人学生と中国人学生の母語による意見文の構造の違い」と題して発表予定である。 また、分析のための参考資料として、中国の語文(国語)教育についての情報収集を行ってきた。その過程で語文課程標準の邦訳、分析を進めたが、その内容を広く日本語教育関係者と共有するべく、「中国語文(国語)教育事情―中華人民共和国教育部「普通高中語文課程標準(実験)」(2003年)の紹介―」と題して『アカデミック・ジャパニーズ・ジャーナル』第10号で発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度は、まず、前年度末に引き続き本調査を行った。中国の大学生については、前年度末に30名分の意見文を収集済みであったが、9月に中国の大学を訪問し、さらに43名の協力を得て、合計で73名から分析資料となる意見文を収集することができた。日本の大学生については、首都圏にある複数の大学で研究への協力を呼びかけ、合計で66名から意見文の提出を受けた。 日中対照分析は、学生の意見文の各パラグラフにおいて中心文の内容がどのように展開していくか、テーマの説明、論拠、意見の表明、予想される反論といった構成要素の配列がどのようになっているかを主な観点として進めている。「研究実績の概要」に書いたとおり、前者の観点による分析結果は2018年2月に「母語による意見文の日中比較―パラグラフ構成を中心に―」と題してポスター発表を行い、後者の観点による分析結果は2018年8月に「日本人学生と中国人学生の母語による意見文の構造の違い」として発表することが既に決まっている。 分析を進める中で、さらに興味深い観点として、使用される語彙のタイプの違いが注目された。日本人学生の場合、学校や家庭での日常生活やテレビなどを通じた報道に言及するような語が多く使われているようであるのに対して、中国人学生の場合、そうした語に加えて、叙情的、文学的な語の使用が目立つようである。この点についても比較するべく、出現した語の分析のために必要なソフトウェアを入手し、操作のための研修にも参加するなど、分析の準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、既に行った、あるいは予定されている研究発表の内容をさらに詰め、結果を調査報告や研究論文として完成するために、分析を精査する作業を行う。さらに、現時点では日中の調査対象の数に差があるため、日中対照の精度を上げるために日本人学生による意見文を追加収集する予定である。 また、使用される語彙のタイプの違いについては、語の出現頻度、語と語の共起関係などの分析を進めていきたい。手順としては、まず、日本人学生による日本語の意見文のテキストデータ、および中国人学生による中国語の意見文のテキストデータをソフトウェアに合わせて加工し、出現頻度の高い語は何か、語と語の共起関係はどのようになっているかについて分析する。その上で、出現頻度の高い語がどういうタイプの語なのか、共起関係にどのような特徴があるのかについて、分類語彙表などを参考としてカテゴリー化していくこととする。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主たる理由は、以下の2つである。1つめは、中国人学生による中国語の意見文の翻訳を外部業者に業務委託したが、当初見込んだ額より安価に収められたことである。2つめは、研究結果の発表を行った研究会が首都圏で行われたことである。年度の初めには関西圏で行われる研究会等での発表を念頭に置いていたが、それを変更したことで旅費が抑えられ、次年度使用額が生じることとなった。
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Research Products
(3 results)