2017 Fiscal Year Research-status Report
コミュニケーション活動と一体化した新たな文法指導方法の提案
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16K02834
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
永井 典子 茨城大学, 人文社会科学部, 教授 (60261723)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 言語間の影響(CLI) / 英語文法指導 / 受動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、まず、英語と日本語における語彙・統語的差異に基づき、日本語を母語とする英語学習者が習得困難になると想定される語彙・統語構造を特定した。しかしながら、それらの語彙・統語項目が学習者にとって実際に習得困難なものになるかどうかは、学習者がそれらの言語的類似性と差異性をどう認識しているのかに依存していることが近年の第二言語習得における言語間の影響(CLI)研究で明らかにされている。そこで、2016年度に行った日本語を母語とする英語学習者の英語受動態の知識調査結果(Nagai et al 2016)をJarvis 2000、Jarvis & Pavlenko 2007に依る主観的類似性・差異性の下位区分(perceived similarities/differences、及び assumed similarities/differences)に基づき、再分析した。その結果、日本語を母語とする英語学習者は、熟達度が同程度であっても、日英語の受動態の類似性・差異性の認識の仕方が異なることが明らかになった。つまり、日英語の受動態の類似性・差異性の認識の仕方に関して3つの学習者グループが存在することが明らかになった。それらは、日英語の受動態の類似性と差異性を正確に認識している学習者グループ、類似性と差異性を認識はしているがその差異を適切な英語で表現できない学習者グループ、日英語の類似性を誤って想定し、誤った英語表現をしている学習者グループである(Nagai 2018)。 この研究成果に基づき、学習者の日英語の類似性と差異性への認識の違い対応した、最適なタスクを考案する必要があり、そのようなタスクの在り方を検討した。特に、無意識に使用している母語への気づきを促進させるには、どのようなタスクが最適なのかを、タスクに基づく教授法の研究などをともに検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2017年度の2つの研究計画のうち、本研究が対象としている文法項目について、日本語を母語とする英語学習者が遭遇する困難さについては、受動態を使用した研究である程度予測することができた。しかし、他の文法項目や語彙項目については、さらに調査する必要があるため。また、文法項目の機能についても、受動態については、深く考察が進んだが、その他の文法項目については、さらに考察する必要があるため。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は次のことを行う。 日英語の文構造とその機能が異なる文法項目に関し、対応する日本語の文構造とその機能に気付くためのタスクを開発する。このようなタスクは、CEFRで述べられている行動主義(action-oriented approach)、及び複言語主義(plurilingualism)教育とも密接に関わっているため、CEFRにおけるこれらの考え方、また実際の教育事例を調査・研究する。また、タスク開発には、フォーカス・オン・フォームのアプローチに基づいたタスクやプラクティスも参考になるため、これらに関する先行研究や事例調査を行う。最終的には、 上記の先行研究調査の結果を基に、目標文法項目に最適なタスクやプラクティスを開発し、国内外の学会で発表し、フィードバックを得る。
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Causes of Carryover |
2017年度は、予定していた成果発表の学会がすべて関東近辺で行われ、旅費の支出が当初予定していたより、少なくなったため。2018年度は、すでに受理されている学会発表がポーランドのポズナムで開催されるので、その旅費として使用する。また、本研究成果の一部をSpringerから著書として出版することが決定しているので、その準備に使用する。
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Research Products
(2 results)