2017 Fiscal Year Research-status Report
文学テキストを活用した学習用英文法の体系構築に向けた複合的アプローチ
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16K02837
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
小町 将之 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (70467364)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松野 和子 静岡大学, 大学教育センター, 准教授 (80615790)
高瀬 祐子 静岡大学, 大学教育センター, 特任助教 (30708433)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 学習用英文法 / 英語文学 / 句構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
英文法を理論的体系と見たときに基礎的な重要概念と考えられる「句」の概念について、その定義の仕方と特徴づけ方の観点から、詳細に検討した。学習用英文法でよく行われる解説方法として「語」(1語)の対概念として「句」(2語以上)を定義する方法があるが、いくつかの例にもとづき、句を語数によって定義する場合には、学習用英文法の文脈においても「1語でも句である」と見なした方が理論的簡潔性が維持できることを見た。また、「句」を、その主要部によって構造的に特徴づける方法と、構造的文脈で果たす役割によって機能的に特徴づける方法とを対比し、それぞれのメリットとデメリットを検討した。これらの観点から、高校生用の検定教科書を対象として、どのような解説が与えられているかを集計して分析し、「句」の概念に関わる解説は理論的一貫性や簡潔性に欠けるものとなっており、学習者にとっては事実上、知的に効果的な役割を果たしていないことを観察した。 また、英語文学に関する基礎的研究として、19世紀の海洋小説を代表するエドガー・アラン・ポーの『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語』 とハーマン・メルヴィルの 『白鯨』における所有の概念について考察した。両作品を「所有」(possession)というキーワードから読み解くことにより、海の上や南氷洋の島々を舞台にした作品でありながら、土地獲得の過程や鯨の所有権に関する描写にはアメリカ本土における領土拡張主義政策の影響が色濃く見られ、2人の作家が所有に関する曖昧性や抽象性をあぶり出している様子が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究分担者の育休等の事情により、必ずしも当初予定した通りではないが、研究の進め方について継続的に見直しを続けており、その結果、当該年度は、検定教科書について「句」の扱われ方など具体的な分析を進めて成果を発表するところまで進められたため、おおむね順調に研究を進めることができた。今年度からは新たな研究分担者を加え、より効果的に研究を進められる見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
新たな文法事項を取り上げて、検定教科書を対象に理論的体系の整合性などの検討を行いながら、より簡潔な学習用英文法の体系に関する具体的な対案を検討するとともに、文学作品を取り扱う実験授業を計画している。
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Causes of Carryover |
平成29年度3月に大学教育研究フォーラムへ分担者4名での参加を予定していたが、うち1名は育休のために参加できず、次年度以降の研究計画および分担者の見直し等を行って、執行を次年度に延期したため。
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