2016 Fiscal Year Research-status Report
日本語を母語とするドイツ語学習者に対する明示的指導の持続的効果
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16K02860
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
太田 達也 南山大学, 外国語学部, 教授 (50317286)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 第二言語習得 / ドイツ語教育 / 明示的指導 / 訂正フィードバック / 文法習得 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本の教室環境においてドイツ語を学ぶ学習者に対する明示的指導の効果を文法項目別に検証し、その結果から、ドイツ語教育の現場では特にどのような文法項目において明示的な指導がなされるべきか、あるいは控えられるべきかについての教授法的提言を導き出すことにある。 平成28年度の前半はまず、複数の大学における実験実施のための具体的計画を策定した。また、EUROCALL 2016等の学会に参加して情報収集を行うとともに、国内・海外の大学図書館において必要な文献調査を行った。 平成28年度の後半は、国内の2つの大学でドイツ語を学ぶ学習者を対象に「冠詞の使用に関する規則」(どのような状況では定冠詞あるいは不定冠詞を使い、どのような状況では冠詞をつけないのが適切か)についての明示的指導の持続的効果を測る実験を行うこととし、説明にあたって使用する教材およびプレテスト、ポストテスト1、ポストテスト2を、連携研究者とともに作成した。 実験は次の要領で行った。最初にプレテストを実施し(実験前の状態の測定)、その直後から複数回にわたり特定の文法規則についての明示的説明を行う(明示的指導の実施)。続いて指導終了の翌週に当該文法項目に関するポストテスト1を行う(短期的効果の測定)。その後は特に当該文法項目についての明示的指導を行うことなく通常の授業を行い、10週間後に同じ文法項目に関するポストテスト2を行う(長期的効果の測定)。実験で得られたデータは85名分である。データ収集は順調に行われ、収集したデータの分析もおおむね終了している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では3年の期間中に全部で8つの文法項目について実験を実施する予定である。平成28年度は、今後3年間の具体的な研究計画を策定することができたほか、1つの文法項目(「冠詞の使用」)について実験を実施し、順調にデータを収集・分析することができた。また、文献資料調査も順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に行った「冠詞の使用」に関する実験では、明示的指導の持続的効果を測る適切かつ現実的な手法について検討した結果、訂正フィードバックを与える作文指導を複数回行った上で作文データを収集するという方法はとらず、明示的説明を複数回行った後で適切な冠詞を選択させる筆記テストを行うという方法を採用した。これは、複数の大学における授業環境下での実験という条件において、測定の対象となるべき「冠詞の使用」に関するデータを自由作文形式では十分に収集できないことが危惧されたためである。平成29年度以降に実施を予定している「動詞の位置」や「格変化」等の実験においても同様の問題が発生する可能性がある。しかしその一方で、学習者による作文の言語データを分析する方法は、学習者の暗示的知識の発展を調べる上できわめて有効な手段である。今後は、授業環境という制約された条件の下でどのようにして有効な作文データ取得を実現できるかについて検討する。また、学期制からクォーター制への変更があった大学では、実験に必要な期間が十分にとれないケースが生じるため、研究目的の遂行に支障が生じない現実的な実験デザインについて、あらためて見直す必要がある。 なお、平成29年度は、国際学会・国内学会での研究発表および論文執筆を複数予定している。
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Causes of Carryover |
研究代表者および連携研究者は平成29年夏にヨーロッパで開催される国際学会に参加する予定であるが、その申込が平成28年度中にあり、宿泊費および参加費を平成28年度の予算で支払う必要が生じたために、前倒し請求を行った。その際、不足が生じないように前倒し額を大きく見積もったため、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究代表者および連携研究者は、国際学会・国内学会に参加して研究発表を行うとともに、学会および大学図書館にて資料調査を行う。また、国内での研究意見交換のための会議費・旅費も支出する。
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